せっかく釣った魚を家で食べたら味がイマイチ……そんな経験はありませんか? 魚の鮮度を守るカギは「ドリップ管理」。吸水と保湿を両立するグリーンパーチなら、包むだけで旨味を逃さず美味しく保存できます。今回は船釣り初心者代表として紙屋街の鈴木さんが、プロ船長に学んだ『釣った魚を美味しく持ち帰る基本』をレポートします。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)
釣魚の鮮度は下処理で決まる
グリーンパーチは魚の熟成に役立つアイテム。けれども、魚を美味しく味わうためには、熟成の前に欠かせない「最高の鮮度で持ち帰るための下処理」が重要です。
そこで今回は、そもそも論。魚を釣り上げてから鮮度を落とさず持ち帰るための「超実践的な下準備」を実体験すべく、これからさらに好機を迎える伊勢湾の大型青物を狙って、人気船『ブルードラゴン』に乗り込みました。
グリーンパーチの販促を担う鈴木さん(船釣り初心者)が、プロである船長やベテランアングラーに直撃! 釣り上げた魚を美味しく持ち帰るための下処理の所作から、クーラーボックスの賢い活用法まで、その秘訣を余すことなくご紹介します。
鮮度よく持ち帰るために使うクーラボックス(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)冷海水とクーラーボックス
「釣れた魚はしっかり冷やす」これが、魚の鮮度と旨味を保つための絶対条件です! そして、その鮮度維持に不可欠なのが、冷海水(潮氷)とそれを実現するクーラーボックスの存在。これがないと、鮮度どころか釣った魚を持ち帰ることもできません。
そして冷海水は魚の体温上昇を防ぎ、「身焼け」から守るためには欠かせない命の水。
魚を美味しく持ち帰るための第一歩は「活け絞め」です。適切な脳絞めを行い、エラを切って血抜きをしますが、この一連の作業と、魚が暴れ抵抗した際に魚の体温は急激に上昇(10℃上がるといわれています)します。
冷海水の役割
特に夏場は、水温の上昇に加え、炎天下の船上に引き上げられることで、魚は体温上昇の危機に晒されます。体温が上がると身が劣化し、味が落ちる「身焼け」を引き起こしてしまいます。(身焼けすると身割れにつながり見た目にも良くありません)
この急激な体温上昇を抑え、身焼けを防ぐのが、冷海水の最大の役割です。血抜き後は、すぐにクーラーボックスの冷海水でキンキンに冷やし込むのが、美味しさへの最短ルートなのです。
冷海水を汲んでいるシーン(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)釣魚はしっかり冷やす
冷海水は、魚が住み慣れた海水100%で冷やすのが理想です。さらに言えば釣った魚が住むポイントで汲み上げた『海水氷(海水を凍らせたもの)』を用意するのが究極の理想です……が、ほぼ無理ですよね。
通常は水道水の氷やスーパーやコンビニ等で手に入れた板氷を必要分持ち込み、船上で海水を冷やすのが一般的。この時、塩分濃度を薄めない工夫が肝心です。
鮮度を保つには冷海水が大事(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)冷海水の作り方
ここからは、理想の冷海水を作るための3つの秘訣をご紹介します。
1. 少量から作る
冷海水を作る際は、ペットボトル氷や保冷剤を詰めたクーラーボックスに、バケツで海水を汲み入れしっかり冷やし込むことが重要です。最初から大量の海水を入れると、なかなか冷え切らないので釣果にあわせて魚が浸る程度が目安です。
水温は5℃以下を保つことを意識し、それ以上温度が上がらないよう、保冷剤やペットボトル氷を十分に備えておきましょう。
2. 容量の半分が目安
冷海水の量は、最初は釣れた魚が浸る程度あれば十分です。釣れるにしたがい適宜海水を追加していきます。
最終的にクーラーボックスの容量の半分程度(例:60Lクーラーボックスなら20~30L程度が目安 ※保冷剤・氷含む)あれば十分魚を冷やし込めます。
3. 塩分濃度を維持する
最も避けたいのは、溶けた氷から出る真水によって海水の塩分濃度が薄まり、魚を薄い塩分濃度で長時間保存してしまうことです。
水道水の氷を使用する場合は、厚手のビニール袋に入れてからクーラーボックスに投入するようにしましょう。また、スーパーなどで手に入る板氷も、袋を破らずそのまま使用するのがおすすめです。
60Lクーラーボックスで冷海水を作る場合、冷やすのに必要な氷の目安は2ℓペットボトルで4本程度。予備も考慮して5~8本備えておくと安心です。船で氷が支給される場合も、溶ける真水に注意し、袋に入れて使用しましょう。
なお、夏場は熱中症対策も重要。ややかさばりますがドリンクや軽食をまとめて入れるのではなく、予備の保冷剤や板氷と共に、20Lほどの小さいクーラーボックスを別で用意しておくと安心です。釣れた魚を美味しく持ち帰るためには、「釣れた魚が住み慣れた海水を維持する」という意識が大切なのです。
船長直伝「活け絞め」の極意
ここからは、『ブルードラゴン』の山下悠船長に伺った、船上での魚の扱い方と「活け絞め」の具体的なコツをご紹介します。
1. まずは「脳絞め」
「魚を釣り上げたら、暴れて危険なので、すぐに脳天を叩いて脳震とうを起こさせます。魚の動きが止まり、落ち着いてから脳絞めを行うこと。手に持った鋭利な刃物は慣れていても危険ですからね。」
船長によると、魚の脳の位置はほぼ共通で、エラ蓋の上あたり、もしくは目と目の間にあるくぼみにナイフなどの絞め具を刺すだけ。その後、軽くひねったり、回転させたりしてしっかりと脳を破壊することで、魚は動かなくなります。
脳絞め(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)2. 続けて「血抜き」
魚の動きが止まったら、血抜きに移ります。「エラと背骨の付け根にある動脈を、ナイフの刃で擦り切るようなイメージで」と船長。
血抜きはバケツで行っても構いませんが、長時間放置せず、2〜3分ほどしたらクーラーボックスにいれること。また、「抜け出る血が凝固して血抜きを妨げないように、適度に魚を振ると血抜けがスムーズ」なんだとか。
船上での大切なマナー
この時、甲板に魚の血液やウロコなどが飛び散り船を汚すことがあります。汚れが乾いて取れにくくなる前に、バケツで海水を汲んで軽く流しておきましょう。
なお、ウロコやエラ・内臓の処理といった本格的な下処理は船上では行わず、ご自宅でお願いします。
血抜き(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)「神経絞め」にチャレンジ
血抜きまで完了していれば、最低限の鮮度維持は達成できています。しかし、神経絞めを施すことで、魚が硬くなる(死後硬直)までの時間や、その後の保存時間に対する鮮度(旨さ)をさらに引き延ばすことができます。これは、美味しい魚を長く楽しむための既知の事実となっています。
神経絞め(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)特に足の早い(鮮度落ちが早い)サバやサワラなど、身に水分が多い魚や、50cmを超える中〜大型魚のように一日では食べきれないサイズの場合は、神経絞めを施しておくのが非常に有効な処置です。
神経絞めは大型魚の処置に有効(提供:週刊つりニュース中部版編集部・牧田)「とはいえ、釣りも楽しみたいはず。時合待ちやポイント間の移動時など、手が空いた時間に神経絞めを施すだけでも、その鮮度維持の恩恵は得られます。ぜひアングラーの皆さんにはチャレンジしてみてほしいですね。」(ブルードラゴンZ 悠船長)

