前回の『魚名と魚種は全くの別物!サケとマスの違いを徹底解説(1/8)』では、サケとマスの魚名と魚種の違いを解説した。今回は俗にトラウト呼ばれる種類の違いを説明していこう。
日本のサケとマスの概説
分類学上、サケとマスの違いはない。いずれも、サケ目サケ科の魚だ。サケ科は11属約200種に分類されている。サケの仲間は変異が多いため、分類が確定していないものも多い。
このなかで、日本人になじみのあるのが、イトウ属、イワナ属、大西洋サケ属(サルモ属)、太平洋サケ属(オンコリンクス属)の4属。日本で見られる魚種としては次に上げる種がある。
イトウ属:イトウ。
イワナ属:イワナ(ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴキ、エゾイワナ(アメマスは降海型)は亜種)、オショロコマ(ミヤベイワナは亜種)、レイクトラウト、ブルックトラウト。
サルモ属:アトランティックサーモン、ブラウントラウト(シートラウトは降海型)。
オンコリンクス属:シロザケ(英名チャムサーモン)、カラフトマス(英名ピンクサーモン)、サクラマス (サツキマス、ビワマスは亜種、ヤマメ・アマゴは河川残留型)、ベニザケ(英名ソッカイサーモン、ヒメマスは湖沼型、クニマスは亜種)、マスノスケ(英名チヌークサーモン)、ギンザケ(英名コーホサーモン)、ニジマス(英名レインボートラウト、スチールヘッドは降海型)。
その他:シナノユキマス(コレゴヌス属)、グレーリング(デュマルス属)。
種類別分布と歴史
イトウ属
イトウ属は、日本最大の淡水魚であるイトウを含む5種が世界に分布している。
日本では絶滅寸前で、道北の猿払川など11水系の河川で自然繁殖が確認されているのみ。季節に応じて河川の上流域から河口付近、沿岸部と生息域を変えることが知られている。
イワナ属
イワナ属は世界に50種以上。
日本在来種としては、2種7亜種が生息。
在来種以外では、明治35年に日光湯ノ湖にブルックトラウト、昭和41年に中禅寺湖にレイクトラウトが移入され、自然繁殖が確認されている。
サルモ属
サルモ属では、ブラウントラウトが釣り人に人気のターゲットだ。昭和初期にブルックトラウトの卵に混じって移入されたとされている。
各地で自然繁殖が確認されているほか、釣りのターゲットとして養殖が行われている。
アトランティックサーモンは、ノルウェーなどで養殖されたものが食用として輸入され、スーパーなどでもよく見かける食材だ。
オンコリンクス属
オンコリンクス属は、シロザケやニジマスに代表される北太平洋を中心に分布。
ほかの属の魚が、何度も川と海を往復し、数年に渡り複数回産卵を行うのに対し、この属の多くの魚が1度の産卵後にその一生を終える。
この属に属する日本在来種は、サクラマス、サツキマス、ビワマス、ヒメマスが知られている。
サクラマス、サツキマスの河川残留型はヤマメ、アマゴと呼ばれる。また、ビワマスは琵琶湖の地域型個体群で独立した種とする学説もあり分類が定まっていない。
ヒメマスはベニザケの湖沼型で、北海道の一部の河川では降海型も確認されている。