「初鰹はさっぱり、戻り鰹はこってり」カツオの味覚における常識だったはずのこの言葉が、最近どうも当てはまらなくなってきているようです。
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初鰹と戻り鰹
全国各地で水揚げされ、様々な形に加工される食用魚・カツオ。我が国においてもっとも重要な魚種のひとつであり、古くから珍重されてきました。
そんなカツオには、古来より「旬」をあらわす言葉が存在しています。それは「初鰹」と「戻り鰹」です。
春先から夏にかけて、南日本から順に獲れ始めるものが「初鰹」、秋から初冬にかけ、逆に北日本から獲れ始めるものが「戻り鰹」となります。
初鰹と戻り鰹、どう違う?
この初鰹と戻り鰹、かつてはそれぞれハッキリと異なる特徴を持っていました。
回遊魚であるカツオは、餌の小魚を求めて日本の沿岸を北へ南へ移動していきます。まだ回遊し始めたばかりの「初鰹」は、餌を飽食する前なので脂があまり乗っておらず、さっぱりした赤身の美味しさを味わうものでした。
一方で戻り鰹は、北日本沖合にある暖流と寒流の衝突点である「潮目」で餌を飽食し、太って再び南下してくるものなので、脂の乗ったこってりとした美味しさを楽しめたのです。
「戻り鰹は脂」はもう古い?
しかし現在では、この「常識」がどうも通用しなくなっています。5月ごろに獲れる初鰹にしっかり脂が乗っていたり、逆に10月の戻り鰹がきれいな赤身だったりすることも多くなっているのです。
なぜこのような現象が起こるのか、理由はハッキリしていません。ただカツオの脂乗りは、捕食する餌の量や種類によって変わるため、最近は春先に彼らを肥えさせるような餌の群れが日本近海に接岸していたり、本来秋になると増えるはずの回遊系の小魚が減ってしまっていたりする可能性はあるでしょう。
大型魚ゆえにサクの状態で売られることが多いカツオは、筋肉の状態を目視確認してから購入することができます。「初夏だから脂はないだろう」「秋だから脂乗ってるに違いない」などと決めつけることはせず、自分の好みに合った脂乗りのものを柔軟に探してみるのがオススメです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>