この数ヶ月間、ネットを騒がせている「ジャンボタニシ農法」という言葉。一体何が問題なのでしょうか?
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ジャンボタニシ農法
突然ですが「ジャンボタニシ農法」という言葉について、聞いたことはないでしょうか? 数か月前からネットで話題になり、様々な場面で話題となっている言葉です。
これはその名の通り「ジャンボタニシ」という生物を利用して行われる農法で、南日本の水田で実施されることがあるものです。
彼らは植物食性で、とくに水中に生える植物を好んで食べます。そのためうまく使うことで水田に生える雑草を食べてくれるため、生物農薬として利用することができ、これを用いたのがジャンボタニシ農法です。
ジャンボタニシとは何者か
ジャンボタニシという名前はちょっと独特ですが、実はこれは標準和名ではありません。学術上はスクミリンゴガイと呼ばれており、またアクアリウムの界隈ではアップルスネイルという名前が親しまれています。
彼らは南米から移入された外来種で、もともとは生物農薬として持ち込まれたわけではなく、食用にされることを目指して持ち込まれたものでした。農業の合間に養殖できるということで、農家が養殖事業に参入する例もあったようです。
しかし泥臭い、内臓(卵巣)に毒があるという理由から食材として定着することはなく、現在ではすべての業者が養殖業から撤退しています。
ジャンボタニシ農法が危険すぎるワケ
このジャンボタニシ農法、一見すると「食用貝を利用して行う無農薬農法」ということで非常に良さそうなものに思います。しかし、実際には安易に手を出すべきものではありません。
ジャンボタニシは広食性な上に大食漢であり、雑草だけでなくイネそのものもバクバク食べてしまいます。実際、南日本では最も大きな被害を出しているイネの害虫(害貝)のひとつで、専用の農薬も数多く出ている危険な生物です。
ジャンボタニシ農法は、水田の水位をcm単位で細かく調整することで彼らにイネを食べさせず、イネのあとから生えてきた雑草だけを食べさせようとするもので、言葉の上では容易そうですが実際にはかなりの手間がかかります。
もともとは、ジャンボタニシが増えすぎてどうしようもなくなってしまった水田で苦肉の策として生み出された方法であり、現在ジャンボタニシが入り込んでいない場所で新たに行うべきものでは全くないのです。
加えて彼らは拡散力が高く、水田から用水路や河川に逃げ出し、あっという間に勢力を拡大します。1件の農家が良かれと思って始めたジャンボタニシ農法によって、地域の水田すべてがジャンボタニシの被害に合う可能性もあります。
現在ジャンボタニシは、環境省によって、駆除が推奨される危険な外来種(生態系被害防止外来種)に指定されており、水田に入りこまれたとしてもまずは農薬等の化学的、あるいは耕うんなどの物理的防除によって排除を目指すべきものとされています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>