まったく恥ずかしいことに……大阪府民がことあるごとに飛び込む道頓堀の川は、そのまんま「道頓堀川」というらしい。もう少し説明すると、グリコの看板があるところの川だ。あの中には、どんな生き物が潜むのだろうか……?
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
大阪の用水路には何が住む?
生き物どころか、魔物さえ潜んでいてもおかしくない、とまでは言わないが、大阪市内のそこかしこを流れる川は、まあ、きれいではない。道頓堀川はその象徴のようなもので、高度経済成長に余計なものがアレコレ流された影響が今なお残存し、汚いままなのだと言う話がある。古い大阪の人間はみんな口をそろえて「昔はもっと汚かった」と顔をしかめる。
道頓堀川はまだしも中心市街のど真ん中を流れる川で、この通りには数々の人間模様があることから、何かしら人々の意識の中で「美化」されてさえいる。しかし純度抜群の汚さは間違いのないところで、ダイブした人間たちは、みんな異様な臭気を帯びて帰ってくるという。そんな痴れ者からは死ぬほど罰金を取ってやればいいと思うが……それはともかく。
この用水路というか川というか、ここには意外に多様な生き物が潜むという。きれいな川に水は棲めないというが、わざわざこんな汚い川を選んで棲む魚にも、興味をそそられる。
道頓堀に鮎の噂
以前Yahooのネットニュースにも上がっていたのだが、道頓堀川には、鮎がいるという話がある。鮎というと、澄んだ川の中でも限られた場所にしかいないというイメージがあるのだが、なんと、あんなアレな川に……。
その他、コウライモロコやニホンウナギの目撃例もあるというのだから、驚くばかり。ブルーギルやブラックバスも、「当然」いるらしい。その他、テナガエビ、モクズガニなど。一丁前な生態系を築いているらしい。
「魚がいない川はない」と村上春樹さんがどこかで書いていた気がするが、まさかこういう意味で言ったわけではないだろう。
釣りはできるのか……?
さて、そんな話を聞くと、釣り人が気になるのはひとつである。
「釣りはできるのか?」
この答えは、微妙なところである。道頓堀川の横手は遊歩道になっていて、つまり人が歩けるようになっている。行政で決められているのは、ざっくり言うと、「遊歩道を歩いている人たちに迷惑をかけることはやめてくださいね」というもので、多分釣りもすべきではないのだろう。少なくとも、私はやらないことにする。正直、別にやりたくもない。
昔はもっと汚かったという話
実は私の自宅の二区画横にも、例によって汚い川が流れている。流れている、というよりは状態としては、プールのように静止している。汚い用水路がある。ここでは例によって汚染に強いコイが呑気に泳いでいる。
ちなみにその川も「一級河川」で、この定義について触れておくと、日本の国土の保全について、特に重要な水系のことらしい。別に水がきれいとかそういう話ではないようだ。しかし、こんなものが本当に重要な水系なのか……?
ちなみにかつての上司がこのあたりの出身で、「昔はもっと汚かった」という生き証人である。ここまで年配の諸先輩方がそういうのだから、どうも、思い出が黒ずんでいるわけではなさそうだ。ヘドロの浚渫や水門の設置など、行政の取り組みによって、美化されてきたらしい。
一時期、道頓堀川をプール化しようという冗談のような話も浮上した。それが実現したら、私もいずれ「昔はそんなん信じられんくらい汚かったんや」と呟く者なのだろうか。
<井上海生/TSURINEWSライター>