昨今テレビなどでも取り上げられている「地球のために虫を食べるべきか否か」問題。どうしても虫は食べたくないという人にもピッタリの「折衷案」が存在します。
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昆虫食で賛否両論の日本社会
いま日本のインターネットで最も盛り上がっている「食材に関する話題」をご存知でしょうか。その話題とはずばり「昆虫食」について。
最近、食用にされる昆虫やそれを用いた食材、特に養殖が容易である「コオロギ」を使って作られた食品に注目が集まっています。コオロギを粉末にしたものがが市販の食材に使用されたり、学校給食で希望する生徒に振る舞われるなどしてニュースになりました。
その一方で、昆虫という生き物はそれ自体に強い嫌悪感を持つ人も多く、昆虫食材が広まることへの反発もかなり大きなものとなっています。今では毎日のようにインターネット上で賛成派と反対派、推進派と慎重派の間で議論が行われています。
なぜ虫を食べる必要が?
しかしなぜ、いま昆虫を食べるべきだといわれているのでしょうか。
実は昆虫はタンパク質生産効率が高く、畜産動物や養殖魚と比べてより少ない量の飼料や、タンパク質含有量の少ない飼料で、同じ量の食用タンパク質を作り出すことができるのです。
かねてより、今後地球的な人口爆発が起こること、そしてそれによる世界的な食糧不足が発生する可能性があると指摘されています。そういった状況の中、エネルギー変換効率の低い畜産動物の代わりに昆虫を養殖し、それを食べることが持続可能な社会の構築に貢献するとされているのです。
ただし上記の人口爆発については、増加率の予測が下方修正されているなど、根拠となる予測に不完全性や偏りが見られるというのも事実です。そのため昆虫を食べることの必要性については、様々な方向から反論も寄せられています。
魚の養殖に利用する
そういった現状の中、昆虫を間接的に利用し、食糧問題を解決しようという考え方があります。それは「昆虫を養殖し、その昆虫で食用魚を養殖する」というもの。
現在、養殖魚の飼料は原料に天然魚を使うことが多くなっており、乱獲につながるなど環境への負荷は小さくありません。この飼料をミールワームやコオロギなどの昆虫に置き換える試験が愛媛などで行われているのです。
試験の結果、半量ほどを昆虫に置き換えた飼料は、魚原料の飼料と比べても養殖魚の成長に遜色が無いことがわかっています。しかもそれだけではなく、魚由来の飼料だけで育てたものよりも品質が良い、病気に強いなどの効果も得られることがわかったそうです。
今後、昆虫が間接的に我々の食卓を支える存在となる可能性は大きいといえるでしょう。このような昆虫の利用法なら、現在発生している多くの人の不満も抑えることができるのではないでしょうか。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>