フィッシングショー大阪に出かけた筆者。当初は、さまざまなメーカーの新製品を見て手に取ることが目的であったが、実際行ってみると環境問題やリサイクル活動の展示に関心が。中でも特に気になった「漁網のリサイクルプロジェクト」について紹介しよう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター笠野忠義)
目次
ゴミ問題に代表される環境問題
今回のフィッシングショーで、用品の展示はさることながら、目に留まった展示を見かけた。それは、何かというと「環境問題」。釣り人=環境問題というと「水辺の清掃活動」や「漁港のごみの持ち帰り」というのが頭に浮かぶであろう。
日本釣り振興会(日釣振)は、根がかりしているルアーの実態を知ってもらうような展示や、正規品と模造品を比較できるような展示を行っていた。あるところではブースを間借りして、ダイバーと協力し、根がかりしているルアーを回収し、高校生たちが自分たちでリメイクしたルアーの展示などもあった。
リサイクル活動
しかし、清掃活動以外の視点でリサイクルへの取り組みの展示をしていたブースを見かけた。それは、釣り用品をはじめ、多方面に製品を展開する「グローブライド」(DAIWA)だ。ブース一帯リサイクル品に囲まれ、ウェア・シャツ・バッグ・ロッドケースetc。ぱっと見は「リサイクル品なの?」と思うくらいで、言われないとわからないほどの展示品であった。
リサイクルされてできたウェア2着と、ドレスがメインで展示されていた。ドレスはマダイをイメージしたものだそうだ。また、違うブースではリサイクル品のクーラーボックスの展示も。そうこうしていると、社員の方から話かけられ、私も環境問題には関心があるので話を伺った。
BE EARTH-FRIENDLY -漁網アップサイクルプロジェクト-
リサイクル品を手にし、手触りや見た目などを見て関心していた時に「こちらすべてリサイクル品なんです。」
と声をかけられた。見た目の感想など話せていただいて、この日の展示までの苦労話を伺った。リサイクルされるもの……それは「廃棄漁網」。釣り人目線で単純に考えることは「海中に眠っている根がかったルアー」じゃないの?と思うであろう。この日まで実は私もその一人であった。
廃棄漁網の量に驚き
D:「これらはすべて廃棄される漁網から作られています!」
私:「え?漁網ですか?なぜ、また漁網なのでしょう?」
魚網の処理が大変なワケ
これらの廃棄漁網は北海道の漁港の協力を得て漁網を回収している。単に漁網を処分……というわけにはいかない。
・漁網は「産業廃棄物」になるため、焼却できず埋め立てる必要がある。
・埋め立てるには莫大な費用がかかる上に環境負荷が大きい。
・分別して処理するにも、材質に色々なものが使われており、非常に困難。
・一つの漁網を分別するのに1時間かかり、負担も大きい。
・処分すれば、買い替えだが、買い替えにも費用がかかる。
寿命は1年から2年と短い
漁師さんにとっては大変な負担となること間違いない。網の処分・買い替え、さらになくてはならない船の購入費、修繕費、燃料費、係留費など、莫大な費用がかかる。高齢の漁師さんとなると、とても困難であることが伺える。
毎年2000tが廃棄
そして毎年廃棄される漁網の量。なんと2000t。想像がつかない量である。漁網にピンと来なければ、私たちが使う釣り糸2000tでもいいだろう。それにしても想像がつかないが、相当の量ということがわかる。DAIWAではそのうち100tを回収してリサイクルしているとのこと。100tという量も相当な量である。
協力なしでは実現なし
北海道の漁協から協力を得て企業側で回収し、1社で加工までというのには当然限界がある。漁協の方や、リサイクル関係の企業にも恵まれて、このプロジェクトが実現したとのこと。
生地になるまでの工程
(1)回収した廃棄漁網は回収業者によって回収され、それらを洗浄し、チップ化
(2)チップ化したものを一旦液状化し、細いノズルに通して糸(原糸)にする
(3)糸を何本かより合わせて糸にし、染色をし、生地に仕上げる
強度やコストに苦労
製品化まで来たが、ちょっとした疑問が。
私:「廃棄される漁網なので、強度的にどうなのでしょう?」
D:「はい、とても苦労しました。初めはいろいろ苦悩がありましたが、そちらはクリアしました。」
私:「あと、生地にするまでにこれだけの工程があって、いくつもの企業様が中間に入って、コスト的にはどうなのでしょうか?」
D:「リサイクルしたとはいえ、現段階では販売はしておりませんが、変な話、新品のものより若干割高になりそうです。」
海中に長い時間あるものなので強度の部分がどうなのか気になって質問してみた。色々試行錯誤されて強度を出せるようになったそうだが、この問題に取り組んでいる時に「漁網の材質を変えたら?」なんて話題もあったそうだ。しかし、現状では難しく、漁網も当然強度の問題がある。
単純に、「海中に残るんだから生分解にしたら?」と思う人もいるだろうが、強度的にもコスパ的にも無理がある。製品も、新品と遜色ない出来栄えで、「リサイクルされてできたものです」と言われないとわからないレベルだ。生地の強度も、肌触りも、見た目もぱっと見リサイクル品とは思えない。販売価格の部分も何か模索しているようだ。