いまや国民的関心事とも言える寄生虫アニサキス。刺身や寿司など「生の魚」を食べる際のリスクについては知られてきましたが、そうじゃない「生食」でも気をつけなくてはいけないことがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イクラにアニサキス?
今年も全国で猛威を振るった寄生虫アニサキス。サバやイワシなど青魚の刺身や寿司から検出され、小売店が営業停止に追い込まれたというニュースも相次ぎました。
そんなアニサキスですが、先日なんと「イクラ」の中から見つかったというツイートが話題になっています。
ツイート主によると、醤油漬けのイクラをご飯に乗せて食べようとしたところ、ゆっくりと動く糸状の物を確認。よく見たらアニサキスだったのだそう。
このツイートには「まさかイクラからアニサキスとは」という驚きの声が相次いだそうです。
「自作」イクラは高リスク
ところが実は、イクラはむしろ普通の刺身や寿司よりも「アニサキスがいるリスクが高い」食材だとも言えるのです。
その理由として、まずイクラの親であるサケが、アニサキスの寄生率が高い魚の一つだということが挙げられます。そしてアニサキスの多くは内臓に寄生しているため、内臓の一つである卵巣に入り込んでいる可能性も当然あります。
そのため市販のイクラは漬け込む前に熱湯処理をしたり、あるいは高性能な冷凍庫で長時間凍らせるなどの処置で殺虫を行っており、生きたアニサキスが検出されることはほとんどありません。
しかし、これらの処置を行わないでつくった「自作」のイクラではどうしてもリスクが高まってしまうのです。アニサキスは塩分濃度の変化に強く、醤油漬けにしただけでは殺虫できないことを理解しておく必要があるでしょう。
タラコ・酢漬け・塩辛でも
イクラと同様に、タラコや明太子についても、自作する際はアニサキスに注意が必要です。スケトウダラなどタラ類もアニサキスの寄生率はかなり高いためです。
また、イワシやニシンの酢じめなどもよく自作されますが、これも意外と危険です。特にカタクチイワシのような、小型で3枚下ろしをせずに生食に近い食べ方をする魚は、調理時にアニサキスを視認できる確率が下がってしまうため、気づかずに喫食してしまうことがあります。
自作する場合はよく目視確認するか、数万円程度かかってはしまいますが、業務用の強力な冷凍庫を購入するのも良いでしょう。
それから、イカで作る「塩辛」も注意したほうが良いでしょう。イカの塩辛は内臓である肝臓を生食する行為であり、アニサキスリスクは決して低くはありません。身と和える前に、肝臓を包丁で丁寧に叩くことで殺虫効果が上がるのでオススメです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>