環境に良い、持続的な漁法として世界的にも評価の高い日本の定置網漁。しかしその一方でいま、定置網漁とその他の漁法との間で「摩擦」が発生するかもしれない状況となっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
SDGsな漁法「定置網漁」
世界的に魚介類の消費量が増えている昨今。それに伴い発生している海洋資源の先細りや漁獲量の減少を懸念する中で、漁業におけるSDGs(持続可能な開発)は非常にホットなトピックとなっています。
そしてそんな状況の中、国際的にも注目を浴びているのが我が国で行われている定置網漁です。
定置網漁は網の中に入ってきた魚のうち、最も奥まった「袋網」に入ってきたものだけを獲るという漁法です。そのため、最初に網に入った魚のうち実際に漁獲されるのは2~3割ほどであり、根こそぎ獲るということが起こりません。
加えて、海底の環境ごと攫ってしまう底引き網などと異なり環境の改変が少ない、漁場が近いために燃料の消費が少なくて済むなど、様々な点でエコであると考えられており、持続可能な漁であるとされているのです。
定置網漁に逆風?
その一方で、実は今日本の定置網漁はとある「危機」を抱えています。
先月14日、日本定置漁業協会の会長らが水産庁を訪問し、同庁長官に対して10の項目が記載された2022年度統一要望を提出しました。そこには「漁獲可能量(TAC)管理における定置漁業管理手法の検討」という項目があり、「定置網漁の特性に配慮してほしい」という要望を伝えているといいます。
実はいま、このTACと定置網漁の間で避けにくい摩擦が発生しており、問題になりつつあるのです。