先日、関東地方で発生したやや大きい地震の際に、河川の水面を一斉に泳ぐ魚の群れが観測されました。果たして彼らは地震を予知したのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
地震で暴れる魚が話題に
国土交通省の荒川下流河川事務所は、今月7日に発生した最大震度5強の地震に関して、その発生時の旧中川を映していたライブカメラの動画をSNSに投稿しました。
その映像には、河川にいた魚や鳥の群れが一斉に反応する様子が映っていましたが、とくに注目されたのは魚たちの反応。地震発生の数秒前に、数多くの魚が一斉に水上に飛び跳ね、川面が水紋で覆われるほどになったのです。
そしてその直後、大きな揺れで画面が揺れる様子が収められています。この投稿に対し「魚の動きがすごい」「地震を予知したのでは?」といった驚きの反応が寄せられています。
魚と地震
地震の多い我が国では、古くから地震と「魚」の行動には関係がある、と考えられてきました。例えば現代では流石に迷信とされているものの、古くは「大地震は地下に棲む巨大ナマズが引き起こすもの」と思われてきたのはご存知かと思います。
日本で最初の天下人である豊臣秀吉は、伏見城築城にあたり、家臣に「ナマズによる地震にも耐える丈夫な城を建てるように」と書状にて指示をしたそうです。この影響もあり、近代に至っても「ナマズに地震予知の力があるのではないか」と言われ、その研究も行われてきました。
ナマズの他にも、例えばリュウグウノツカイなどの珍しい深海魚が打ち上げられる、魚ではないですがクジラ・イルカなどの海獣が集団で打ち上げられるなどの現象が起こると「地震と関係あるのでは」と不安になる人は多いようです。このような現象は実際に過去の大地震の前に観測されており「宏観異常現象」と呼ばれています。
実際に予知能力はあるのか
しかし、実際のところ本当に魚たちは地震を予知し、異常な行動を取るような事があるのでしょうか。残念ながら、現時点ではそう言うのはちょっと難しいようです。
2019年に、東海大海洋研究所と静岡県立大のグループが魚の地震予知に関する研究を行ったことがあります。この研究では、リュウグウノツカイやサケガシラなど「打ち上げられると地震が起こる」と呼ばれる深海魚を調査対象とし、これらが各地で捕獲されたり海岸に漂着したりした事例と、その後に近くが震源となった地震の発生状況を調べ、照らし合わせました。
その結果、これらの2つの事象には「関連性があるとは言えない」という結論がでたそうです。そしてこの研究に限らず「魚に地震予知の力がある」と証明できる事例は現時点では見つかっていないといいます。
ただ、上記のナマズを始め、魚の中には微弱な電流や振動、音を感知できるものが少なくありません。彼らが震源から発せられる地震波やそれに伴う異常な現象を敏感に感知した結果、ヒトよりもわずかに早く地震に気づく、というのはあり得る話と言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>