秋のサケ漁や冬のウニ漁を控えたこのタイミングで、北海道南部の海に記録的な赤潮が発生し、巨額の被害が出ています。なぜこんな事が起こってしまったのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
北海道でウニやサケが大量死
現在、北海道の中央部から東部にかけての太平洋沿岸でウニやサケの大量死が発生しており、各メディアでニュースとなっています。収束に目処はついておらず、漁師からは悲鳴が上がっています。
今回最も被害が大きかった場所のひとつ・えりも町ではウニの栽培漁業が盛んですが、数年前に放流しまもなく漁獲できる大きさのものも大量に死んでしまっています。ここから新たに稚ウニを放流したとしても向こう数年はほぼ漁獲できず、全国的にウニの価格の記録的高騰が発生する恐れもあります。
また、この時期は秋ザケの定置網漁が最盛期を迎えるのですが、こちらも大きな被害が出ています。定置網にかかったサケの半数が死んでしまっているところもあるそうです。
原因は赤潮の可能性
北海道南部の太平洋では、今年9月下旬に過去に例を見ない規模の赤潮の発生が確認されています。北海道では今回の大量死との因果関係を調査しているといいます。現在も周辺の海水は赤茶けた色味になっており、赤潮が継続していることが示唆されます。
赤潮は、主に植物プランクトンが大量発生し、海水が赤褐色や茶褐色に色づく現象です。水深の浅く、富栄養化の進んだ塩分濃度の低い海域でよく発生しますが、外洋に面した場所で発生することもあります。
赤潮が発生すると、プランクトンが出す物質がエラの細胞を壊して呼吸困難にさせてしまうため、魚や海洋生物の大量死が引き起こされます。
今回の赤潮について、現地調査を行っている日高振興局は、近年起きている「海水温の上昇」、または「大雨による塩分濃度の低下」に大量死の原因があると見ています。
「想定外」の赤潮理由
今回赤潮を引き起こしたのは「カレニア・ミキモトイ」という毒性プランクトンが主体だと考えられています。このプランクトンは魚毒性が強く、漁業被害が大きくなりやすいとされてます。
一方で、ミキモトイが出現しやすいとされる環境は「水温25℃前後」と比較的高水温であるため、北日本でミキモトイによる赤潮が発生することはこれまで多くはありませんでした。しかし今年は北海道周辺で記録的な高水温が続いており、全国の沿岸でも一番の高温を記録した日もあったため、赤潮が発生しやすい環境になっていたと考えられます。
それでは、この高水温は一体なぜ発生したのでしょうか。
外洋には、地球の自転の影響で作られる、直径が数十km〜数百kmの海水の渦が多数存在しています。このような渦のうち、周囲よりも暖かいものは「暖水渦」と呼ばれるのですが、ここ数年、黒潮から発生した暖水渦が釧路沖にあることが多くなっているそうです。
これが南下する寒流である親潮の南下を妨げているため、北海道の沖合の水温が高止まりしていると考えられています。
暖水渦の発生は地球温暖化とも関連があると推測されています。したがって、地球温暖化を止めない限り、このような事例は続いていく可能性が高いといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>