琵琶湖の『淡水真珠』養殖業を「ナマズ」が救う可能性 寄生魚として期待

琵琶湖の『淡水真珠』養殖業を「ナマズ」が救う可能性 寄生魚として期待

かつて琵琶湖の主要漁業のひとつであった真珠養殖。様々な理由から現在は苦境にあえいでいますが、「ナマズ」がその救世主になるのではないかと期待を集めています。

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淡水真珠って知ってる?

宝石としての汎用性が高く、日本では冠婚葬祭いずれの場面でも使用できることから根強い需要のある真珠。二枚貝の殻のなかに入れ込まれた「核」の表面に、貝殻の原材料でもある「真珠層」が形成されていくことで造られる真珠は、宝石の中では唯一「養殖」が可能になっています。

現在、日本で生産される真珠の殆どが、海水生であるアコヤガイで造られる本真珠(あこや真珠)です。その一方で、淡水生の貝である「イケチョウガイ」も真珠を作る作用を持っており、この性質を利用して造られるのが淡水真珠です。

琵琶湖の『淡水真珠』養殖業を「ナマズ」が救う可能性 寄生魚として期待淡水真珠(提供:PhotoAC)

琵琶湖や霞ヶ浦で生産されるため「湖産真珠」と呼ばれることもあります。

淡水真珠は、形はややいびつなものが多いのですが、真珠層の厚みがあり、独特の光沢があるため好まれています。

琵琶湖の淡水真珠

湖産真珠の養殖に用いられるイケチョウガイは、もともとは琵琶湖の固有種です。そのため琵琶湖では古くから淡水真珠の存在が知られてきました。

古くはなんと万葉集にも、琵琶湖の真珠を詠んだ歌があります。養殖も古くから行われ、最盛期の1970年には6000kgもの水揚げを誇ったそうです。

琵琶湖の『淡水真珠』養殖業を「ナマズ」が救う可能性 寄生魚として期待イケチョウガイ(提供:茸本朗)

しかしその後、水質汚染によるイケチョウガイの減少や、安い中国産の淡水真珠などにおされて水揚げは減る一方。2012年には11kgと消滅寸前の量まで減少、その後多少は持ち直したものの、現在も19kgほどと僅かな生産量になっています。滋賀県では年間生産量の目標を50kgに設定し、生産量増加のための様々な施策を行っています。

琵琶湖の真珠養殖を救う「ナマズ」

湖産真珠の生産量を増加させるには、母貝となるイケチョウガイの安定的な供給が欠かせません。しかしイケチョウガイには「幼生のとき、魚類の腹部に寄生する」という変わった性質があり、これが養殖の難しさにつながっていました。

現在、イケチョウガイの寄生をさせるための魚「寄生魚」として主に利用されているのが「ニジマス」ならびに「ヨシノボリ」というハゼ科の魚。しかしニジマスは食用として盛んに養殖が行われているため入手しやすいものの、高温に弱く、寄生魚としては春先しか使えないといいます。一方でヨシノボリは底生魚のため貝を寄生させやすいのですが、養殖が行われていないため捕獲するしか手に入れる方法がなく、かつ小型の魚のため飼育も難しいそうです。

琵琶湖の『淡水真珠』養殖業を「ナマズ」が救う可能性 寄生魚として期待ナマズ(提供:PhotoAC)

そこで注目が集まっているのがなんと「ナマズ」。ナマズは大型魚で肉食性のため養殖がさほど難しくなく、環境変化にも強く、底生魚なので寄生もさせやすいといいます。水産試験場では、寄生魚としての活用を見込んで5年ほど前からナマズの養殖に取り組み、2年前には安定的に養殖できるようになったそうです。

養殖業者に試用してもらったところ「イケチョウガイの寄生数も多く、生産管理をしやすい」と好評だったそうです。試験場は今春以降も研究を継続、最適なナマズのサイズや寄生密度の解明を進める予定だそうです。(『琵琶湖産の真珠、復活の鍵はナマズ 母貝を育む「ゆりかご」に』京都新聞 2021.3.1)

<脇本 哲朗/サカナ研究所>