日本人にとって馴染み深い食用魚であるヒラメとカレイ。実は、ヒラメは全国的に養殖が盛んなのですがカレイの養殖物はマイナーです。なぜこの違いがあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
カレイの養殖はマイナー
古くから日本人に愛され、知名度も高いヒラメとカレイ。いずれもカレイ目に属し互いによく似ており、「左ヒラメに右カレイ」といった見分け方も耳馴染みがあると思います。しかし、漁業的な観点から見ると大きく異なっている部分があるのです。
まず、ヒラメは盛んに養殖が行われています。ピーク時からは減少しているものの、今日でも年間6000t以上生産されており、隣国韓国や中国で養殖された個体の輸入も多くなっています。稚魚を放流して自然環境下で成魚になるのを待つ「栽培漁業」も盛んに行われています。
その一方で、カレイはヒラメのように「盛んに養殖されている」とは言えない状況にあります。稚魚の放流は各地で行われているものの、それは漁獲するためと言うよりむしろ「釣魚」としての需要を満たす目的として行われている事が多いようです。
なぜ、このような違いが出るのでしょうか。
ヒラメとカレイの食性の違い
ヒラメとカレイはとても良く似ていますが、「食性」という点に注目すれば異なる点が多いです。それはヒラメ科の代表である「ヒラメ」と、カレイ科の代表種である「マコガレイ」を見比べてみるとすぐに分かります。
ヒラメの口は、大きく裂けて牙が目立ちます。
これに対し、マコガレイの口はおちょぼ口で牙がありません。
この口からも分かる通り、ヒラメは獰猛なフィッシュイーターで、魚やイカなどを盛んに捕食します。一方でマコガレイの主食は底生小生物で、大きくなるまでは魚を捕食することはあまりありません。
ヒラメほど養殖に向かないカレイ
この食性は成長速度にも関係するとされており、ヒラメは3年ほどで40cm程度に成長する一方で、マコガレイは環境による変異が大きいものの、同期間で20cmほどにしかならないと言われています。(『わが国の水産業 ひらめ・かれい』社団法人日本水産資源保護協会 1990.3)(『カレイのすべて』週間釣りサンデー 1981.11)
この成長速度の差が、そのまま養殖採算性の高さ・低さにもつながるのです。
また、刺身や寿司ネタとして高い需要があり、高級魚のイメージが強いヒラメと比べると、カレイは唐揚げ・煮付け用の安い惣菜魚としてのイメージが強く、高値をつけにくいという理由もあります。このこともまた、養殖が盛んではない大きな理由のひとつと言えるでしょう。