中国ではコロナウイルスの影響で、野生動物の食用ならびに取引が禁止されることになったという報道がありました。今回の規制はおもに陸上性動物へのもののようですが、取引が規制されている魚は存在するのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース編集部)
フカヒレにも規制の手が
我々日本人にとって耳馴染みのある「フカヒレ」も規制が進んでいます。上記の習国家主席の使用禁止宣言はおもにフカヒレを念頭に置いたものといわれており、世界で最もフカヒレを消費する国のトップの発言として注目を集めました。
規制は輸入国である中国だけでなく、主要な生産国であったアメリカでも積極的に導入され、2019年時点で、ハワイを始めとした12の州でフカヒレの採取を目的としたサメの漁獲が禁止されています。
アオザメなど高級フカヒレの材料となるサメ類は世界的な減少が懸念されており、またフカヒレ漁ではサメの本体は利用せず海中投棄されるため「残虐だ」と言われることも多く、これらが規制に拍車をかけているようです。
広大な禁漁区の設定も
その他中国では、2020年1月をもって、中国最大の河川である長江流域での淡水魚漁を禁止したと発表されています。
中国には「四大家魚」という4種のコイ科淡水魚をはじめ食用として人気のある淡水魚が存在し、長江はその一大生産地となっていました。しかし長年の乱獲や汚染が祟り、漁獲高が大きく落ち込んでしまっており、資源を回復させるために禁漁とすることになったのです。期間は現時点では10年と発表されています。
当然ながら多くの漁民が職を失ってしまうわけですが、政府は職業訓練や補償金の給付などで対応するとしています。
種の保存には効果的
中国におけるこのような野生動物取引規制は、強大な権力を持つ政府と立法機関によりトップダウンで行われています。日本では考えにくい強権的な処置であり、現時点でウイルス感染の拡大防止に貢献できるかは未知数ですが、種の保存の観点からは効果的でしょう。
マグロやウナギの乱獲をいつまでも止められないわれわれ日本人にとっては、少し耳の痛い話かもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>