海のサカナと月の深い関係について 潮汐は捕食と産卵に大きく影響

海のサカナと月の深い関係について 潮汐は捕食と産卵に大きく影響

夜空に浮かぶ満月を見て、「今日は大潮か」と思う。これが多くの釣り人の思考回路でしょう。ただ、満潮・干潮に月の引力が関係していることは知っていても、その原理までは意外と知らないはず。今回は潮の満ち引きについて解説していきます。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

サカナの捕食との関係

海の中で生活しているサカナにとって、潮の動きはとても重要です。まず、生きていく上でもっとも必要な食事についても潮は大きく関係しています。

魚釣りの世界では当たり前の知識になるかもしれませんが、海のサカナは潮が動く時によく釣れると言われています。

例えば干潮から潮が満ち始めた時や、満潮から潮が引き始めたが時などがそのタイミングになります。この時水中では「プランクトン」と呼ばれる微生物が、潮の流れに乗って水中を漂います。

潮の動きが大きければ大きいほど、流れも速くなるため、プランクトンも潮の動きに合わせて良く動きます。

すると、海の中で生活している生き物たちにとっては食事タイムのスタートです。プランクトンを食べるために小さい魚が集まり、その小さい魚を食べるためにより大きいサカナが集まります。

魚も生きることに必死なため、この時間帯は血眼になって食事をするのです。

海のサカナと月の深い関係について 潮汐は捕食と産卵に大きく影響潮が動く時はサカナたちの食事時(出典:PhotoAC)

釣り人にとってはチャンスタイム

そんな時に、釣り人の餌がふわーと目の前に落ちてきてしまうと、ついついサカナは見境なしに食いついてしまいます。

このサカナたちの食事タイムのことを釣り人の間では「時合い(じあい)」と言います。

しかし、潮がよく動くタイミングなら魚は絶対に釣れるのかというとそうでもありません。魚が釣れることには潮だけではなく、餌となる生物(プランクトンや小魚など)の習性や、海の状態、気温、天候なども深く影響しており、大潮だから絶対に釣れるというわけでもないのです。

サカナの産卵との関係

魚と潮の関係において、食事以外でも深く関わっている習性があります。

それが『産卵』です。

サカナたちの中には月から得られる情報や潮の動きを繁殖活動に利用しているものがいます。

例えばクサフグというサカナは5月下旬から8月上旬の大潮の日に、波打ち際で数百匹が集まって一斉に産卵をします。

この理由はいまだに詳しくは解明されていませんが、一説によると、産み落とされた卵は、潮の流れにのってより広い地域に拡散させるためだと考えられています。

サカナの他にもエビ類も大潮の日に産卵を行います。

大潮の影響で水質や水位が大きく変化すると、その刺激を合図にメスのエビは脱皮をし、オスと交接して受精します。そして、次の大潮の時まで子供を抱え、満潮の影響で再び水位が上がると、育った子供を水中に放します。

クサフグやエビなどはいずれも、自分の遺伝子を残すための戦略として、大潮を利用していると考えられています。水の中で生活する生き物にとって、産卵と月の大きさや、潮汐の影響が深く関わっているのは間違いありません。

海の生き物にとってのカレンダー

人間は基本的には24時間周期で生活していますが、海や水辺に生息する多くの生物の生態は、24時間周期ではない複数のサイクルと密接に結びついていることが最近の調査で分かってきています。

海の生き物にとって、潮の動きは時計でもあり、カレンダーの役目もしていると言えるでしょう。

その正確さは人間よりもはるかに優秀なのは言うまでもありません。

<近藤 俊/サカナ研究所>