週刊つりニュース東京本社1階『釣り文化資料館』には、和の釣り道具にまつわるコレクターズアイテムが多数展示されている。これらの中から冬季に旬を迎える魚種を選び、竹材で作られた江戸和竿を中心に付随する道具類を紹介。「冬の巻・前編」では中通し竿を操る江戸前のハゼ釣りに焦点を当てる。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版 葛島一美)
筆者プロフィール
昭和30年生まれの64歳。東京中日スポーツに入社、釣り担当の後、フリーの釣り&釣魚料理カメラマンライターとして活躍。著書は「平成の竹竿職人」「焼き印の顔」「釣り具CLASSICOモノ語り」「和竿大全」(つり人社刊)と続く〝和の釣り道具4部作〟を筆頭に多数。東京はぜ釣り研究会副会長。
江戸前ハゼのシーズン
東京湾奥に位置する江戸前のハゼ釣り暦は夏のデキハゼに始まり、秋の彼岸、晩秋から初冬の落ち、そして年末から年始にかけて深場のケタハゼで終わる。
ケタハゼ釣りシーズンの現在は東京湾門前仲町の深川富士見から乗合船が出ており、昔ながらに中通し竿の放列ができる光景は壮観。大型船のほか、櫓(ろ)の練り釣りは今もって現役だ。
中通しハゼ竿の仕組み
中通しハゼ竿の仕組みは手元に取り付けたイト巻きからミチイトを繰り出し、つまみと呼ぶ突起を経由して鳩目穴からくり貫かれた竹材の内部を通り、穂先先端の口金からミチイトが出てくる。
ひと昔前、ヒラメやイカなどで流行った沖釣り用インナーロッドと同じく、外通しガイドがないためにミチイトの送り出し&たぐり上げを行う際、絡みが少ないのが利点。
中通しハゼ竿の穂先には、感度と食い込みがいい布袋竹を使うことが決まりごと。布袋竹の穂先に矢竹を継いだものを矢竹竿といい、穂先から手元まで布袋竹を用いたものは総布袋竹竿と呼ぶ。
並継ぎの矢竹竿は先調子に仕上がり、機敏な操作ができるため数釣り志向のファンに好まれる。反対に印籠継ぎの総布袋竹竿は胴調子に仕上がり、独特の釣り味が堪能できるのが大きな魅力だ。
標準的な竿の長さとオモリ負荷
標準的な中通しハゼ竿はオモリ負荷3~4号とし、2本継ぎの6尺竿(約1.8m)、3本継ぎの9尺竿(約2.7m)、4本継ぎの12尺竿(約3.6m)の長短3本から成り立っている。和竿全盛の古き時代、街の釣具店には「お店物」(たなもの)と呼ばれる既製品がズラリと陳列されていた。
なお、深川富士見のハゼ船ではオモリ負荷3~4号の中通し竿があればシーズンを通して楽しめる。
競技思考の2本竿釣法
このように、だれにでも釣れる庶民の釣り物として親しまれてきた一方で、数釣り勝負の競技釣りターゲットとして、左右1本ずつ構える2本竿釣法が誕生した。
竿の長さはその日その時の釣況を読んで、水雷の異名を持つ全長4尺(約1.2m)以内の短竿から、2間半(約3.9m)の長竿まで使いこなし、調子や自重を合わせた2本組の対竿はマニアックな中通しハゼ竿の代表格。
さらには食い込み重視の軟らかい調子や深場用としてオモリ負荷4~6号の硬めの竿を注文し、一等賞を目指してしのぎを削ったわけだ。その競技志向の江戸前ハゼ釣りは「東京はぜ釣り研究会」が受け継いでいる。
<週刊つりニュース関東版 葛島一美/TSURINEWS編>