あくまでも個人的な感覚だが、クマゼミの声を聞くと梅雨が明けることになっているのだが、今年は様子が違う。クマゼミが鳴きだしても相変わらずの梅雨空が続いている。おかげで各河川の水位は本流志向のわれわれには適水量を維持しているし、ありがたいことに例年になく涼しい。そんなわけで7月半ばに、木曽川漁協管内(長野県木曽郡木曽福島町)の木曽川本流を訪れてみた。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 APC・三重渓流倶楽部・冨田真規)
さらに尺アマゴを追加
どれどれ、返してもらおうかと口中をのぞき込むが、ハリは1つしかない。こいつじゃないの?ということは、まだおるってことじゃないの?いい方に解釈して再び流れにミミズを送る。息を詰めるように目印を送ること数回。
再び手のひらにカッと鋭いアタリが伝わる。2匹目はさっきのヤツより小ぶりだが、それでも楽々尺を超えるサイズ。こいつの口にもハリは1本しか見つからない。ははーん、まだまだおるか。
直後、浮足立った自分に正に冷や水をかけられるアクシデントが起きた。胸まで立ち込んだスタンスを岸に移す途中で底が崩れてまさかの立ちゴケ。首まで水に浸かった後、恐る恐る周りを確認。しめしめ、誰も見とらんわ。
こんなハプニングはあったものの、その後もアタリは続き、尺超えの大アマゴ4匹と尺イワナ1匹の好釣果。謎の一発は宿題となったが、滝ならぬ流れに打たれたかいがあったというものだ。
釣行後はアユの塩焼き
(提供:週刊つりニュース中部版 APC・三重渓流倶楽部・冨田真規)
実はこの日、釣り以外にもう1つ楽しみなイベントが待っていた。釣友の吉村君の師匠の青山さんが、われらのためにアユを食べさせてくれると言うのだ。まだまだ釣れそうな流れに後ろ髪をひかれたのも事実だが、グゥグゥ鳴る腹が限界だったのもまた事実。ワクワクしながら付知川のほとりの吉村邸へ車を滑り込ませた。
火鉢を改造した即席の囲炉裏(いろり)には、うまそうなアユが串刺しになっていい色に焼けているし、七輪の上には一夜干しにされたアユがきれいに開かれた背を向けてジュクジュクと音を立てている。小坂川の下流で前日に掛けてきたとのことだったが、サイズも太さも美しさも満点の素晴らしいアユだ。
釣り談議に花を咲かせながらも、気になるのは香ばしい香りを漂わせながらあぶられている囲炉裏のアユだ。焼き上がりを今や遅しと待ち構え、「いいぞお」の青山さんの一声でアユの背中にかぶりついた。「熱っ、熱っつー」。ほこほこの身とジュワっと広がるアユの脂のうまかったことと言ったら。これはたまらんっ、あー幸せ。
いい一日をくれた木曽路に感謝しつつ家路を急いだのであった。山深い木曽路は、よその河川が煮えるこれからの季節でも清らかな水をたたえてわれわれ本流師を迎えてくれる。太めの仕掛けを携えて諸君も出かけてみてほしい。
<週刊つりニュース中部版 APC・三重渓流倶楽部・冨田真規/TSURINEWS編>