「釣りはフナに始まりフナに終わる」という格言があります。子供の頃、近くの川や池で小ブナ釣りを経験し、老いてまたフナ釣り戻るという事ですが、フナはそれほど身近な魚でした。フナはヘラブナの事だという人もいますが、ヘラブナ釣りはそれほど奥深い釣りで、その魅力にはまると抜け出せない人も多く、座って釣るスタイルなので疲労も少なく高齢者が最も多い釣りのジャンルといえます。
ヘラブナってどんな魚?
フナ類は、最も一般的な在来淡水魚であり、分類上、ニゴロブナ、ギンブナ、オオキンブナ、ナガブナ、キンブナの5種類に分けられる。しかしその分類がゲンゴロウブナとヘラブナの2種を除き混乱している。ちなみに身近な観賞魚の金魚も中国産のフナの仲間。
ではそもそもヘラブナとは何か。琵琶湖の固有種源五郎鮒(ゲンゴロウブナ)の突然変異したフナを品種改良して繁殖させた魚です。その特徴は他のフナと違い、体高が著しく高く菱形の形をしていて、植物プランクトンを主食としています。
また名前の由来ですが、平たいフナのヒラブナがなまってヘラブナになったようです。
明治時代には関西の河内地方で食用として養殖され、その後釣り堀用、放流用として生産されています。とても臆病な魚で、音と水温にとても敏感なため、ヘラブナ釣りは静の釣りの最高峰といえるでしょう。
ヘラブナは引き味も強く、釣り方も独特で、仕掛けも繊細なアタリを捕えるために多種多様なウキの種類と、泳ぐ層が上層、中層、下層と気圧や水温、光量、水流により刻々と変化するので、練りエサの種類もそれに合わせて多岐に及び、それを数学的に組み立てていく釣りと言えます。
ヘラブナ釣りの起源
ではそんなヘラブナ釣りはいつ頃からはじまったのでしょうか?
日本の釣りは江戸時代頃から趣味としても行われるようになりましたが、ヘラブナ釣りは大正末期に関西で始まったと言われています。
河内地方でヘラブナを食用として養殖したのを池に放流して釣らせたことが最初です。竿も柔らかい竹竿を使っていて、その独特の釣趣が人々に広がり、釣り堀も増えていきました。
関東での隆盛は
関東には昭和6年頃関西からヘラブナを取り寄せ、釣り掘で釣らせたのが最初です。その後ファンも増え、当時主流だったコイやマブナ釣り堀もヘラブナ専用釣り堀になり順調に増えていきました。
ヘラブナは関東では大正7年頃、群馬県館林の城沼に放流され、水産試験場で飼育されたヘラブナが霞ヶ浦、北浦、牛久沼、手賀沼、富士五湖などへ放流され繁殖していきます。
養魚場からの出水のため河川や水郷地帯への流出も多くそれが繁殖し、その後全国的に移植、放流され各地で盛んにヘラブナ釣りが普及していきました。
ヘラ鮒会の誕生
関東では昭和21年に浅草ヘラ鮒会が誕生し、昭和25年には全国組織の日本ヘラ鮒釣研究会が発足し、全国のヘラブナ釣り愛好家たちの交流や大会が行われています。
他にも多数の団体が各地にありヘラブナ釣りを楽しんでいます。
一見ハードルが高そうに見えるヘラブナ釣りですが、はじめると奥が深く一生続けられる釣りです。ヘラブナ釣り歴50年以上の方がたくさんいるのがその証でしょう。
<麻生/TSURINEWS・関東編集部>