皆さんは国内外来魚問題という言葉をご存知でしょうか。日本の地域固有の魚が、人間の手により、国内の各地に生息域を変えて、生態系を壊す外来魚のような存在になってしまう問題のことです。現在の日本が抱える国内外来魚の問題を観賞魚の管理などを交えて説明します。
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『外来魚』の概要
皆さんは外来魚と聞いて、どのような魚を想像しますか?
ブラックバス?ブルーギル?
正解です。
これらの魚は、食用や釣りの対象、観賞用など様々な理由で海外から日本に持ち込まれ、本来の生息域ではない場所に、人為的に放流された魚のことを外来魚と言います。
ブラックバスやブルーギルなどの影響もあって、「外来魚=海外から」というイメージをお持ちの方も多いかと思います。
しかし、実はその認識は少し間違っています。
最近では、外来魚は大きく2つに分けられて呼ばれることが増えてきました。
1つ目は前述のブラックバスのような海外から持ち込まれた魚 =『国外外来魚』。
2つ目は日本固有種だが、本来の生息域ではない場所に持ち込まれた魚=『国内外来魚』です。
外来魚がもたらす問題
国外、国内に関わらず、外来魚がもたらす影響とはどのようなものなのでしょうか。
主な危険性は以下のようなものが考えられます。
①自分より小さい在来魚を食べてしまう
②在来魚とエサの奪い合いになってしまう
③漁業対象の魚を食べてしまう
④毒など人間に直接害を及ぼす可能性がある
⑤ウイルスなどの病気を広げる
⑥近縁の在来種との遺伝子の交雑が起きる
などが考えられます。
これらだけでも、外来魚が地域固有の在来種にどれだけの影響を与えるかが想像できます。
こうした問題を拡大させないために、2005年に外来魚のみならずすべての外来背物を対象にした「外来生物法」という法律が施行され、指定された外来魚を輸入、飼育、リリースすることなどが禁止されました。
意外と知らない外来魚
では外来魚とは一体どのような魚なのでしょうか。
先述の通り、外来魚として知られている魚は数多くいます。
しかし、それらの影に隠れて、実は思ってもみなかった魚が外来魚だったります。
その代表的なものが下記になります。
・ニジマス
・コイ
・タイリクバラタナゴ
・イワナ(国内外来魚)
・ワカサギ(国内外来魚)
・メダカ(国内外来魚)
これらの魚が実は国外外来魚や国内外来魚だったりします。
コイも?
と驚く人も多いと思いますが、実は私達がよく見かけているコイは外来魚なのです。
在来種のコイ(野鯉)も存在しますが、琵琶湖や四万十川などの数カ所でしか生息が確認されていません。
近所の川で見ることができるコイはほぼ確実に外来魚なのです。見分け方は、体高が低いものが野鯉(在来種)、高いものがヤマトゴイ(外来種)とされますが、近年ではほとんどが交雑種か外来種です。
そもそも野鯉(在来種)はとても警戒心が強く、都会でよく見る浅瀬を悠然と泳いでいることはありません。対してヤマトゴイは養殖が進み、人に慣れており、都会にいるほとんどの鯉は、このヤマトゴイもしくは交雑種のはずです。
メダカも外来魚?
また、メダカも国内外来魚です。
日本国内にメダカは2種類(キタノメダカ・ミナミメダカ)います。
もともと離れていた生息域も、人間の手によって曖昧になり、遺伝子の混ざった種類が多数見つかっているそうです。
最近では、人工的に交配させて色の派手なものや、形態的特徴のあるメダカが観賞魚の中でも人気です。
こういった種類の魚が自然界に放流されてしまうと、在来種にどのような影響があるのか未知数です。
観賞魚の飼育や管理方法などを今一度見直す必要があるかもしれません。
観賞魚の放流問題
外来生物法の施行などにより、外来魚に対しての態勢は厳戒になってきていますが、現在もなお、外来生物の管理で問題となっていることがあります。
それは【観賞魚の放流問題】です。
引っ越しなどでやむを得ず手放さなくてはならなくなったり、軽い気持ちで飼い始めた魚が大きくなって、手に余るようになってしまい近所の河川や池に放流してしまう問題です。
本来、その場に生息しえない生物を放流することによって、在来種に悪影響を及ぼすばかりでは無く、自然界の生態系を崩す原因ともなる場合があります。
愛着があって殺処分にしたくないからと放流してしまう人がいるようですが、一人の個人的な意見で判断することは、絶対にNGですので、間違ってもしないようにしましょう。
飼育に困った時は
では、飼育に困ってしまい、やむを得ず手放したい場合はどのようにすればいいか。
①おさかなポストに持っていく
②観賞魚引き取りシステムを利用する
③里親を募集する
これらの手段を使用することによって、自然界に対して悪影響を与えずに対処できます。
絶対に自然界に放流してはいけません。
今後の課題
最近では、外来生物が国内にどれだけ生息しているかや、在来魚が絶滅に瀕していることがTVでも取り上げられるようになりました。
しかし、こういった活動があっても、外来魚の驚異は去るどころか、どんどん悪化しているように感じます。
中には、在来種と争うことなくうまく溶け込んだ外来魚もいます。
しかし、それでよしとするのではなく、「生態系を守っていく」という広い視野でこの問題を捉え、考えるべきでしょう。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>