「どうしたら、そんなに釣れるのですか?」現場やSNSで、そう尋ねられることがある。ありがたい質問だが、私はこう答えるようにしている。「いつも今日の釣りを探しています」「2度同じ釣りはないと思っています」。長く釣りを続けてきたからこそ、過去の経験に助けられることは多い。しかし、その経験が目の前の魚を見えなくしてしまうこともある。今回は、私が釣りをするうえで大切にしている「再現性」との向き合い方について考えてみたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)
長い釣り歴から見えてきたこと
私の釣りの原点は、小学生時代までさかのぼる。学校から帰ると竹竿を持って近くの川へ行き、オイカワやハヤなどを釣った。やがて鯉釣りに熱中し、「野鯉釣り」の歴史を築いた山田勲氏の著書『野ゴイ釣りのすべて』を愛読。山田氏と幾度も文通し、鯉釣りのノウハウを教わるほどの釣りキチ少年だった。
20代のバスフィッシングブームでは、旧JBTA時代からプロトーナメンターとして活動。その後もシーバスやロックフィッシュゲームを楽しみ、50代で仕事を早期退職してからは、アオリイカのエギングや博多湾のショアタチウオを釣りの主軸としている。
現在は年間120日以上フィールドへ足を運んでいる。これだけ長く魚と向き合ってきても、いまだに思い通りにならないのが釣りだ。だからこそ、私が大切にしている言葉がある。「2度同じ釣りはない」ということだ。
同じ釣りは2度しない(提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)前は釣れたが通用しない
天気も潮も、海の状況も毎回違う。私自身、昨シーズンに爆釣したポイントや、自分なりに組み立てた釣り方に執着し、「前と同じように」とルアーを投げ続けて大ハズレを食らうことがある。そんなとき、「前はこうだった」と考えている自分に気づいたら、一度頭を切り替える。
ルアーを替えるのと同じように、頭の中もローテーションするのだ。過去の成功は大切な経験である。ただし、それを「答え」として持っていくのではなく、「手掛かり」として持っていく。そう考えるだけで、目の前の海の見え方は変わってくる。
再現性を一度手放す
経験を重ねたアングラーほど、「あのときはこのパターン」という引き出しを多く持っている。それは間違いなく強みだ。釣りにおける「再現性」、つまり前回釣れた条件や釣り方をもう一度当てはめて魚を釣ることは、釣りが上達するうえでも重要な考え方だと思う。
しかし、その経験が目の前の海を見る邪魔になることもある。潮の速さ、風向き、水温、ベイトの位置。条件が少し変わるだけでも、魚の居場所や反応が変化することは珍しくない。
だから私は、釣れないときほど過去のパターンを一度横に置く。「前はどうだったか」ではなく、「今日はどうなっているのか」を見る。過去の正解を捨てるわけではない。今日の答えを探すために、一度手放すのである。
大事なのは今日がどうなのか(提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)シーズナルパターンも変化する
現在、私が主軸としている玄界灘のエギングや博多湾のショアタチウオでも、これまでの「当たり前」がそのまま通用しないと感じる場面がある。「シーズナルパターン」とは、季節ごとの魚の動きや、それに合わせた釣り方のこと。
例えば博多湾のショアタチウオでは、前年に連発したポイントや釣り方だからといって、翌年も同じように反応するとは限らない。そこで私が意識しているのは、暦だけで判断しないことだ。
水温はどうか? ベイトはいるか? 潮は動いている? そして、実際にルアーを投げて魚から反応があるか?
前年の実績は、最初に試してみる理由にはなる。しかし、反応がなければ次を考える。過去の実績を出発点にしながら、目の前の状況を見て、今の釣りへと修正していくのである。
爆釣ポイントにあえて行かない
前シーズンに大釣りしたポイントには、どうしても足が向きやすい。しかし私は、あえて新しい場所の開拓にも時間を使うようにしている。実績のある場所を離れ、新しい場所に立てば、過去のパターンには頼れない。その場の潮、地形、ベイトの有無などを一から観察することになる。
もちろん、すぐに釣れるとは限らない。むしろ失敗することの方が多い。それでも、「この潮では反応がなかった」「この時間帯にはベイトが入らなかった」という経験は残る。「釣れなかった」という結果も、次の釣行で使えるデータになるのだ。
新規開拓は必要コスト(提供:TSURINEWSライター・りおまいのりお)釣れない時こそ観察から始めよう
釣れないと、私たちはつい「今日の正解」を急いで探してしまう。そんなときこそ、一度立ち止まって目の前の状況を見る。
なぜ今日は反応がないのか。
潮はどう変化しているのか。
ベイトはどこにいるのか。
一つずつ観察し、海から返ってくる反応に合わせて釣り方を変えていく。経験が増えれば、引き出しも増える。しかし本当に重要なのは、たくさんの引き出しを持っていることだけではなく、「今日はどの引き出しを開けるべきなのか」を考えることではないだろうか。
過去の成功は答えではない。今日の答えを探すための手掛かりだ。
2度同じ釣りはないから面白い
釣りにおいて経験は大きな武器になる。
「ここで釣れた」
「あのときはこうだった」
そんな記憶があるからこそ、次にどう動くかを考えられる。一方で、経験に答えを求めすぎれば、目の前の海を見失うこともある。再現性を追い求めることで、釣りは深くなる。そして、その再現性を一度手放し、今日の魚を探してみることでも、釣りはさらに深くなる。
「2度同じ釣りはない」。昨日までの経験を持って海へ行く。それでも、今日の海には今日の答えがある。その答えを探し続けることこそ、私が今も釣りに魅了され続けている理由なのだと思う。
<りおまいのりお/TSURINEWSライター>



