かつて我が国の食卓を支えてきた最も安価な大衆魚であったイワシ。しかし今年は異常な不漁に見舞われています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
サンマの代わりにマイワシが活躍
大衆魚御三家と呼ばれるアジ、サバ、イワシの中でも最も漁獲量が多く、食卓に欠かせない存在となってきたイワシ。安価な魚と軽んじられがちですが、冬の一時期を除いて通年脂があり、栄養価も豊富でとても有用な魚です。
マイワシ(提供:PhotoAC)イワシ類の中でももっとも水揚げの多いマイワシは北海道での水揚げが多く、道東の釧路港は2023、2024年と全国1位の水揚げを記録しています。特に近年、主要漁獲対象であったサンマの不漁が深刻になるにつれ、マイワシが生命線となっているようなところがありました。
食味においても、たっぷり乗った脂と濃厚な青魚の風味はサンマの代替たりえるものとして注目されていました。「サンマがいなければイワシを食べればいいじゃない」という文言は昨年までいろいろなメディアで見かけられたものです。
今年のマイワシは壊滅的?
しかしそんな北海道のマイワシ漁が、今年はピンチに陥っています。本来なら大量の水揚げが期待できるはずの時期に、なんと2か月連続で全く0となってしまっているのです。
水揚げされるマイワシ(提供:PhotoAC)6/16に解禁されたマイワシ巻き網漁が、8/19の時点でいまだ水揚げ0の異常事態。もしこのまま0で終わればここ10年では初の事例となるため、関係者の不安は高まっています。
回遊魚の管理は難しい
しかし実は、現在の不漁の萌芽は好漁に沸いていた2023年にすでにみられていたと研究者は言います。漁業の技術や設備が向上し、多くの漁師が漁獲するようになれば水揚げは増えますが、その一方で海中の資源量はすでに少し前から減少傾向にあったのです。
そしてイワシやサンマ、サバのような回遊性の青魚はそもそも水揚げが増減を繰り返すものでもあります。北海道でのイワシの水揚げはここ10年上昇していましたが、1990年代には大きな減少がみられた時期もありました。
マイワシの大群(提供:PhotoAC)しかし上記の通り、現在は資源量が減ってしまってもそれを補えるだけの技術があり、結果として資源量に対して過剰な量を獲ってしまうことが可能です。それが続けば、本来「いつか回復するはず」の資源が「回復できないレベル」にまで落ちてしまう可能性もあります。
昨今ではスルメイカでその危機が叫ばれていますが、日本の漁業行政はそれに対して有効な手を打てていません。マイワシも今後、同じ状況に陥る可能性があります。
イワシがこれまでのように大衆魚として我々の食卓にいてくれるか、今が正念場と言えるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

