浅い砂浜に無数に落ちている謎の「茶碗」。これを拾うと褒めてもらえるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
海に落ちている「茶碗」とは
潮干狩りができるような遠浅の浜を歩いていると、不思議なものを見かけることがあります。欠けた浅めの茶碗を伏せたような見た目のそれを拾い上げると、砂でできているのは分かりますが、まるで革のように丈夫で不思議な質感です。
砂茶碗(提供:PhotoAC)これは通称「砂茶碗」と呼ばれているもので、その正体はツメタガイという巻貝の卵塊です。この貝は産卵の際に自らの卵を砂と混ぜ、屈曲した帯状の物体にします。それがまるで砂で作った茶碗のように見えるのです。
アサリの大敵・ツメタガイ
この砂茶碗、有料潮干狩り場では「お尋ね者」になっているところがあります。見つけ次第拾い集めて陸に放置、あるいはゴミ捨て場に持ってきてくれと頼まれることもあります。
集められたツメタガイ(提供:PhotoAC)実はツメタガイは、アサリやバカガイなどの食用二枚貝の天敵。餌を見つけるとキャタピラ付きの戦車のようにのしかかり、殻に穴を開けて中身を食べてしまうのです。
東京湾の潮干狩り場ではときに1メートル四方に数個ずつツメタガイがいることもあり、漁師たちの頭痛の種となっているのです。
効果のほどは?
ひとつの砂茶碗には数万のツメタガイの卵が含まれているそうなので、数個拾うだけでも増殖をおさえる効果は多少はありそうです。
ただ、ツメタガイは最近急に増えた外来生物というわけではなく、もともと我が国に普通に棲息している生物です。我が国の生態系はツメタガイを含む形で進化してきており、彼らが急に朝の二枚貝を壊滅させようとしだしたわけではありません。
古くから食べられてきた食用貝でもある(提供:茸本朗)アサリが減った主因は、我々ヒトによる干潟の埋め立てや河川環境の破壊だと考えられており、それと比べるとツメタガイの駆除によるプラスの効果は小さなものと考えるべきです。砂茶碗は拾いつつも、どうすれば本当に効果的な対策が取れるのか、海に関わる全ての人がしっかりと考えていく必要があるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

