魚の名前や地方名に、やたらと「メジ」という言葉が使われていることをご存じでしょうか。この言葉には漁師独特の観点が見えます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
メジって何者?
先日、釣り人が集まるSNSので「この魚ってメジですか?ソウダですか?」という疑問が投稿されているのを見かけました。メジとはマグロ類の幼魚を、ソウダはヒラソウダやマルソウダなどの「ソウダガツオ」と呼ばれる魚たちを指します。
メジマグロ(提供:PhotoAC)この二つはいずれもサバ科で大きさも近く、初心者からすると混同するのはやむを得ないところもあります。しかしメジのうちクロマグロの幼魚は現在捕獲に規制がかかっており、釣れてしまっても持ち帰ることができません。上記の質問は「これはソウダだよね、持ち帰っても大丈夫だよね」という意味合いが暗にあったものと思われます(実際は残念ながらクロマグロの幼魚でした)。
それはそれとして、この質問は個人的に少し興味深いなと思いました。というのも、ソウダガツオも小さいときは「メジカ」と呼ばれることがあるためです。
目と口が近いサカナたち
調べてみると「メジ」「メヂ」とつく魚はまだほかにもあることがわかりました。例えば秋鮭のなかには「メジカ」と呼ばれるグループがありますし、関西でグレという名前で大人気の釣魚は標準和名が「メジナ」です。ほかにもブリの幼魚やアナゴをメジと呼ぶ地方があります。
メジナ(提供:PhotoAC)サケのメジカは漢字で書くと「目近」、メジナは漢字で書くと(諸説ありますが)目近魚となるそうです。つまりメジという魚名には「眼が近い」という意味があるわけですが、これは「眼と口(吻)が互いに近い」ということなのだそうです。
サケのメジカはほかのサケと比べて、またメジナは同じ場所で釣れるクロダイなど他の魚と比べて、顔が小さく、目と口が一か所にまとまっている印象を受けます。これが彼らを「目近魚」と呼ぶようになった理由なのです。
キーワードは「若さ」
ちなみにサケのメジカは、秋鮭としてとれるもののうち、シーズンの初期に獲れるものを指します。秋鮭は産卵のために川を遡るのですが、産卵が近づくにつれてホルモンの影響で吻が尖り顔が険しくなっていきます。つまりまだホルモンの影響が出ていない、比較的若い秋鮭が相対的に吻が短いので「目近」と呼ばれる状態になります。
目近と秋鮭(提供:PhotoAC)またメジマグロやソウダのメジカはいずれも小型の幼魚を指すのですが、これらサバ科の魚もまた大きくなるにつれて口が大きく、吻が長くなるので、若いうちが相対的に「目近」になります。「メジカ」という名前には、その魚の「若さ」が現れることも多いのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

