ここ数年、暖かくなると必ずどこかで発生する「赤潮」。今年も大規模な被害が出始めています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
八代海の養殖場で養殖魚が大量斃死
九州南部、熊本県と鹿児島県にまたがる日本屈指の内湾「八代海」。入り江が多く波の静かな環境と対馬暖流の影響を受けた暖かく栄養の多い海水の恩恵を受け、養殖業が盛んです。
八代海(提供:PhotoAC)そんな八代海で先月から、大規模な悲劇が発生しています。当地の主要養殖魚であるカンパチやシマアジ、ブリなどが何十万匹も斃死してしまったのです。
先月23日にカンパチ2万匹が斃死したことから始まり、7/7時点で44万匹にまで被害が拡大、被害総額は11億円を超えると推測されています。しかし当地における養殖魚の大量斃死はこれが初めてではなく、2年前には14億円以上の甚大な被害が発生しています。
原因は「赤潮」
これだけ大規模な大量斃死がしばしば発生する理由は「赤潮」の発生です。赤潮とは「赤潮原因プランクトン」という植物プランクトンの一群が何かのきっかけで大量発生し、水中が赤く染まってしまう現象です。大量の赤潮原因プランクトンが水中の酸素を猛烈に消費してしまうため水中が酸欠状態となり、他の生物が死んでしまうのです。
赤潮の発生した海(提供:PhotoAC)八代海はきれいな水域ですが、球磨川などの河川が数多く流れ込むため海中の栄養分は多く、植物プランクトンが増殖しやすい環境にあります。彼らは水温が上昇する夏場に増殖するのですが、近年の海洋温暖化による水温上昇がその増加に拍車をかけており、早い時期から大規模な赤潮が発生しやすくなっています。
同様の環境や現象は八代海に限ったものではなく、毎年夏になると「赤潮により〇〇の養殖魚が大量斃死」という厳しいニュースが全国各地から聞こえてきます。
赤潮用の「農薬」の使用も
赤潮発生のリスクが高まると、県や自治体は「赤潮警報」を発令して警告しますが、養殖業者はそう簡単に大量の魚の移動や避難ができるわけではないので、被害を完全に防ぐというのは困難です。
そのため最近では「駆除剤」の使用が行われています。赤潮は前記の通り植物プランクトンによるものなので、プランクトンを駆除すれば現象を止めることができます。
赤潮の駆除には粘土を使う(提供:PhotoAC)駆除剤の成分はベントナイトなどの粘土と、ミョウバン等の天然素材です。これを混ぜて海中に散布すると、まずミョウバン等によって植物プランクトンが殺草されます。しかしそのままだと、植物プランクトンの死骸を別の生物が食べて新たな酸素消費を発生させてしまうため、その死骸を粘土に吸着させて迅速に海底に落下させます。これにより海中の消費酸素量を低減させ、養殖魚の兵士を防ぐことができるのです。
現在ではこのような駆除剤のほか、赤潮原因プランクトンを直接捕食してしまう生物の開発も進んでおり、まもなく実装されるのではないかとみられています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>

