人里離れた山奥で、ネイティブな渓魚を釣るために知恵を絞る釣り。雄大な自然を一身に感じられる渓流釣りは、実に素晴らしいものだ。だが、大自然の中に入るという事は、そこで生活している動植物たちの庭に入るのと同義だ。今回は、渓流釣りをするなら知っておくべき、危険な動植物についてみていこう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)
遡行時に注意したい植物
まずは、渓流を遡行するにあたって注意すべき植物の存在にフォーカスしていこう。
毒持ちに注意
山には実に様々な野草が生えており、山菜として食べられるものも多い。一方で、毒がある植物も結構な数が存在している。著者が遡行の際に気を付けるべきだと考えるのはイラクサの仲間だ。
イラクサの新芽(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)「ミヤマイラクサ」という種は山菜の「アイコ」として親しまれているが、イラクサの仲間は茎に毒(ギ酸)を湛えた棘を持つ。なんでもない斜面に普通に生えているので、うっかり触れるとチクっとした痛みと共にギ酸が手に入ってしまい、正直かなり痛い。
結構強烈な棘(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)斜面を降りたり、地面に手をつかなければならない際は軍手着用をオススメする。
かぶれに注意
山の中には多種多様な樹木が存在しており。中にはかぶれてしまうようなものも多い。特にウルシの仲間はかぶれる植物として有名だ。また、こちらの植物を見かけた事は無いだろうか。
タケニグサ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)こちらはタケニグサ/チャンパギクといい、どこの河原でも比較的よく見かける植物だ。茎や葉が折れると乳液を分泌するのだが、この乳液はアルカロイドという成分を含んでおり、肌が弱いとかぶれてしまう。
このような「触れるとかぶれる植物」は山中に多いので、知識が無い場合、極力木や植物には触れないようにしたい。
足元のツタ
本流域は水深があるため、必然的に川の岸沿いを歩く機会が多い。こういった場所にはツタ系の植物が生えていることが多く、水没していて見え辛い事も多い。うっかり足を引っかけて転倒しないように注意しよう。特にアシやヨシが多く生えているような場所は要注意だ。
厄介なツタ(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)食用と間違えやすい毒植物
著者はこれまで多くの「食べられる野草・山菜」を紹介してきたが、見た目がそっくりの文字通りの「毒草」も存在する。この項では、「食べると危険」という観点で毒植物に注目していく。
スイセン(毒)とニラ
河川敷でもよく見かける美味しい雑草、もとい野菜として、著者は過去に野生のニラを紹介した。
だが、毎年のように「ニラとスイセンを間違って食べた」というニュースを目にする。実際著者が通う場所でも、ニラとスイセンがほんの数m違いで群生しているのだ。
葉の形状と葉の付け根部分に注目すれば見間違えることは無いが、確実なのは香り。ニラには特有の強烈なニラ臭があるが、スイセンは無臭なので、この点に注目してほしい。
ケマンの仲間
著者はヨモギやシドケ、シャクといった食用となる野草を探している時に、この植物を発見した。
ご存知だろうか(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)パっと見はシャク・ノラニンジン・ヤブジラミといった食べられる野草に近いのだが、葉の雰囲気が違う上、花の形状と咲く時期(写真は4月)が明らかに不自然だった。
帰宅後に調べてみると、毒草であるケマンの仲間(おそらくキケマン)であることが発覚した。このように、食用植物にそっくりな毒草は意外と多いので、これらの毒植物がきちんと見分けられる様になってから、山菜・野草採りを楽しむのが良いだろう。
間違えやすい毒草は多種
その他、有名どころで言えばイヌサフラン(毒)とギョウジャニンニク、バイケイソウ(毒)とウルイ(オオバギボウシ)、トリカブト(毒)とヨモギ・シドケ(北ではニリンソウ)等も間違えやすい植物として有名だ。知識が無い・少しでも不安を感じる方は採集を避けてほしい。
動物・昆虫などの生物
最期は、誰もが恐れる「山に住む動物や昆虫類」について見ていく。
クマ
もはや説明不要、我々渓流師が最も恐れる動物と言っても過言ではない。フンや爪痕、熊棚、強烈な獣臭等を感じた時は、速やかにその場を離れて車へと戻る事をオススメする。クマ鈴やクマスプレーを携行するといった対策も必要だろう。
それ以外にも、釣行前に「ポイント周辺でクマは出ていないか」といった情報収集も大切だ。5月~7月にかけて熊は繁殖期にあたり、活発に行動するので、くれぐれもご注意を!
熊のものらしきフン(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)ヘビ
河原・河川敷では、よくヘビが日光浴をしている。特に注意したいのは、ヤマカガシやマムシといった毒持ちのヘビだ。沢や湿地に住むカエル等を好んで捕食するため、山歩き中、特に藪の中を進む時に突然出くわす事がある。
のっしのっしと無警戒で進むのは大変危険だ。また、毒は無いとはいえ、大型のアオダイショウやシマヘビに噛まれると、傷口から雑菌感染の危険性もある。足元には気を付けよう。
シカ・イノシシ(マダニ)
著者は何度かシカやイノシシに遭遇している。シカは大抵驚いて逃げていくが、イノシシはこちらに向かってくることがあるので、極力遭遇しないようにしたい。それよりも身近で怖いのは、彼らの体に付着しているマダニだ。
動物が通過した獣道にある植物に身を隠しており、藪漕ぎをすると体に付着してくることがある。うっかり噛みつかれるとSFTS等のマダニ媒介感染症に罹患する危険性があるので、忌避剤をしっかり塗っておき、藪漕ぎ後は目視でチェックも行ってほしい。
藪漕ぎ後は必ずチェックを(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)ヤマビル
こちらも渓流釣りならではの危険と言える。雨の前後、湿っぽい場所に長居していると高確率で付着して来る。一度血を吸われると痒い上に中々血が止まらず苦労する事となるし、何より生理的な嫌悪感が凄い。こちらも忌避剤を塗布しておき、目視チェックも定期的に行おう。
こちらがヤマビル(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)ハチ・アブ
これからの季節、一気に増えるのがハチやアブだ。ハチは忌避剤ではどうしようもないので、羽音が聞こえたり目で確認した場合は速やかに離れよう。アブも同様だ。
ブユ、ヌカカ
ブユ(ブトやブヨとも呼ばれる)やヌカカという害虫をご存知だろうか。どちらも数ミリ程度と大変小さく、見た目はコバエのような感じで油断しがちだ。水場に多く生息しており、どちらも刺されると強烈な痒みが長期間続くだけでなく、跡が残る事もある。こちらには忌避剤の使用が有効だ
忌避剤は必須(提供:TSURINEWSライター荻野祐樹)正しい知識できちんとした予防策を!
今回紹介した危険から身を守る方法だが、まずは肌を露出しない格好で釣りに行く事だ。首元の隙間はタオルで隠し、帽子も着用しておく。そして入渓前に顔や首周りに忌避剤をしっかり塗布しておき、熊鈴を用意して、ホイッスルを鳴らしながら入渓する。
遡行時は軍手を着用し、周囲を観察する余裕も併せ持っておきたい。山菜を採取する場合はきちんとした知識を得たうえで……といったところだろう。一見すると大変そうに見えるが、一度ルーティーン化してしまえばどうという事は無い。正しい知識と予防策を持って、大自然を満喫してほしい。
<荻野祐樹/TSURINEWSライター>



