かつて「夢の技術」といわれていた「安価な完全養殖ウナギ」がついに我々庶民の口に入る時代が来そうです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
夢の完全養殖ウナギがついに…!
我が国で最も愛される魚のひとつでありながら、資源の減少により気軽に口にできなくなりつつあったウナギ。我が国固有のニホンウナギのみならず、ヨーロッパウナギやビカーラウナギなど海外の種をも駆逐せん勢いで輸入したため、世界ではワシントン条約で保護しようという声も上がるほどでした。
ウナギの資源がここまで減ってしまったのは、海洋環境の変化とともに、日本や中国による稚魚の乱獲が原因と指摘されてきました。ウナギの養殖は稚魚を採取して大きく育てる形で行われてきたため、養殖漁業が天然資源の保全に繋がらないのです。
日本人のウナギ愛が重過ぎる(提供:PhotoAC)しかし先日、ある吉報が届きました。それは「完全養殖ウナギが一般的な価格で市場流通させられるようになった」というニュースです。完全養殖とは、親魚から生まれた卵を孵化させて成長させ、再び産卵させた卵を孵化させて育てる技術で、これが実現したということは「稚魚を採捕せずにウナギの養殖ができるようになった」ことを意味します。
市場にはどんな影響が?
今回大分県の企業が実現したのは、より正しくいうと「完全養殖ウナギを安価に流通させる」こと。実はこれまでも、ウナギの完全養殖自体は成功していたのです。
しかし、これまでの完全養殖ウナギは養殖の各段階で様々な困難があり、採算を取るのが難しいほど高価になってしまっていました。それが今回、一尾あたり5,000円弱という価格まで下げることに成功し、ようやく店頭で売っても問題ない程度にまでなったのです。
いよいよ我々の口にも(提供:PhotoAC)5,000円と聞くとなかなかの高値のように思えますが、ウナギが絶滅危惧種に指定されていることで購入、喫食を我慢している人は多く、そのような人がようやく安心して食べられるという点でエポックメイキングな出来事と言えます。
もっと大切なことも
また、今回のグッドニュースが、より違った形で我々の暮らしに良い影響をもたらす可能性も指摘されています。それは「ウナギのトレーサビリティの明瞭化」。
実は現在のウナギ養殖に使われている稚魚は、その少なくない量が反社会的勢力や海外との密貿易によって得られていると推測されています。早春の夜に大きな川の河口に行くと多くの人がシラスウナギ(ウナギ稚魚)を採捕していますが、その中には採捕のための資格を持たない密漁者がたくさんいるのです。
後ろ暗い?養殖ウナギ(提供:PhotoAC)つまり養殖ウナギを購入すると、その一部が反社会的勢力の資金源となってしまい得るのです。今回の完全養殖技術の進展は、これを封じられるきっかけになるという点でも非常に大きなことと言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>


