ベラの仲間は夏から秋にかけて関東の磯でよく見られる魚ですが、チョウチョウウオやスズメダイほど人気はなく、採集家にスルーされがちです。しかし成長に伴い色彩や模様が変化し、その美しさを水槽で観察することも可能です。ここでは筆者が採集・飼育したベラの変身記録を紹介します。
(アイキャッチ画像提供:椎名まさと)
飼育しにくいベラ
ベラの仲間は飼育しやすいものが多いのですが、中には飼育しにくい種もいくつか含まれます。
ブチススキベラ(撮影:椎名まさと)枯れ葉のように海を漂うブチススキベラは、その特徴的な姿と雌雄ともに鮮やかな色彩になることから飼育してみたいという声もよく聞きますが、ブチススキベラをふくむススキベラ属のベラは神経質で、細かい餌でないと食べないことも多く、初心者にもおすすめすることできません。
カミナリベラ(撮影:椎名まさと)このほか、日本の沿岸では普通に見られるカミナリベラなどをふくむカミナリベラ属やノドグロベラ属、オグロベラ属、サンゴのポリプを食するマナベベラやクロベラといったベラの仲間も、飼育がやや難しいです。
筆者も磯でカミナリベラやオニベラなどをよく採集するのですが、長生きさせられたことがありません。
大型ベラの持ち帰り注意
ベラの仲間は種類が多く、その中には巨大になるものも知られます。
具体的にはツユベラ、カンムリベラ、タキベラ、キツネベラ、メガネモチノウオ、コブダイ、といった種類です。
カンムリベラの幼魚(撮影:椎名まさと)タキベラやメガネモチノウオといった種はなかなか採集できませんが、ツユベラやカンムリベラは年によっては紀伊半島や四国などの浅瀬でも出現するため、採集してしまう人もいるかもしれません。また、観賞魚店でもよく見られるベラで、ついついお持ち帰りしてしまう方もいるようです。
カンムリベラの成魚(撮影:椎名まさと)しかしながらこの2種はベラの中でもとくに大型になることで知られ、自然下ではカンムリベラは60cm以上、ツユベラも40cmをこえるようになります。
水槽内ではそれほど大きくはならないとされますが、それでも一般的に海水魚を飼育するのに用いられる60~90cmほどの水槽はこの2種のベラには狭いように思われますので、よほど大きな水槽を持っている方でない限り、持ち帰らずリリースしてあげたほうがよいでしょう。
もちろん、採集した魚は、最期までしっかり飼育してあげましょう。
<椎名まさと/サカナトライター>

