今年も春がやってくる。雪化粧の山々に日ごとに茶の色が増してきて、野山のあちこちが白やピンクに彩られる。薄桃色の桜がまぶしい新緑に代わるころには、流れの中は全盛期を迎え、渓魚たちは腹いっぱいにエサを食(は)む。そんな季節はもうすぐだ。仕掛けを結ぶ手を休めてしばしお付き合い願いたい。
いきなり立ち込むのはNG
ポイントに立つと誰でも、一番のスイートスポットが気になるものである。だが、2番川を釣るならともかく、朝一番にお目当ての沈み石をめがけて流れにジャブジャブ立ち込むのは魚を追っぱらってしまってからサオを出す行為に他ならない。
明けきらぬ時間帯は、いいアマゴが脇流れの緩流に着いていることも多くある。
長ザオは水から離れて岸際を探るためにも有効であることを忘れないでほしい。手前の流れから丁寧に探りつつ、静かにゆっくりと立ち込んでいくことが重要だ。
ウェーディングの仕方
ウエーディングは、本命ポイントのやや上流から。1投ごとに半歩ずつ下流と沖へスタンスを移し、流れの筋を20cm刻みで割るような気持ちで流していこう。
イトは張らない!
打ち込んだ仕掛けが手前に寄ってくるようならオモリが重過ぎるかイトの張り過ぎ。サオ先から水面までのイトがふんわり緩やかに弧を描くイメージでサオを送っていく。底を擦るオモリの感触が時折伝わればOKだ。
オモリの調整はやや軽めをチョイスして小さめのガン玉を足していくのがやりやすい。最終的には水に沈めた目印の間隔の広狭まで使って仕掛け全体を流れにナジませるのが私流だ。流し仕舞いでアタリが出ることが多いせいだろう、空水中イト全体を張らないとアタリが分からないと考えてしまうビギナーが多いと思うがこれは誤りだ。
イトを張れば必ず仕掛けは流れのスジを切ってしまい、エサは水中を不自然に斜めに流れ、結果として魚の食い気を誘えない。
ベイトフィッシュを模したルアーなら目の前を横切らせてアピールするのも有効だが、本流釣りはあくまでも魚の口元へエサを届ける釣りであることを忘れないでほしい。
エサを食う層をキープせよ
川の流れは表層よりも中層、さらに低層と徐々に緩くなっていくのが一般的だ。
ターゲットの大アマゴは低層から中層の下部でエサを待つことが多い。であれば、そこを外さずにエサを流し、ラッキーなら魚が口を使ってくれるわけだから、その流れをキープさせるためのオモリ使いが重要となることが分かってもらえると思う。
流れのスジを外さずに仕掛けを送り、アマゴの食う層にエサをキープすること、本流釣りのすべてはまさにここに集約されると言っても過言ではないと思う。イトの細太を気にするよりも流す技術を磨くこと。本流でアマゴに会うための唯一無二の課題である。
感覚は経験から
熟練者は大抵、「このくらいの速さ」、「このくらいの水圧」、「このくらいの抵抗」で食ってくる、と言うのを感覚的に知っている。
この点こそが初級者との差になってくるのだが、その感覚を筆で表現することは難しく、こればかりはフィールドで経験値を積み上げてもらうしかない。
釣れなかった日はその理由を分析し、釣った日はその感触が手にあるうちに次なる1匹を貪欲に追う。そんな努力が本流釣りの奥深い面白さを味わわせてくれるものと私は信じている。