映画のジャンルは多彩ですが、「サメ映画」をご存じでしょうか?身近な恐怖を描くパニック映画にこそ魅力があると筆者は考えます。今回は『ジョーズ』『ディープ・ブルー』を語り尽くす「日本サメ映画学会」の実態に迫り、顧問・中野ダンキチさんと会長・サメ映画ルーキーさんに話を聞きました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
<サメ映画史>に衝撃を受ける
───中野さんはいかがですか。
中野:私は結構衝撃的だった思い出がありますね。これはサメ映画学会の根幹になりえるんですが、「LOFT/PULS ONE」という場所で「東京国際サメ映画祭」というイベントを開催されたんです。イベント名に映画祭ってついていますが、事実上、当時映画は1本しか上映しなかったんです。
それが派生していって、2018年に多摩映画祭(TAMA CINEMA FORUM 映画祭)で「東京国際サメ映画祭としてのイベントをやってください」と呼ばれたんですよ。その時にサメ映画ルーキーさんが、<サメ映画史>について発表したんですね。
その発表が私の中ではすごいカルチャーショックで、「こういう映画の見方・伝え方があるのか!」と衝撃を受けました。

スライド発表が学会スタイルに
そういうことやる人が今まで誰もいなかったのと、こういう楽しみ方ってあるんだなっていう衝撃でした。これ以降、このパワーポイント(スライド)での発表スタイルっていうのがサメ映画学会になった時に提唱されて、「発表する時はパワポで」みたいな流れができ上がっていきました。
そういった意味で、東京国際サメ映画祭で見たスライドはすごくインパクトありましたね。「こんなこと考える人がいるんだ、この人すげえな!」みたいな感じになりましたね。
サメ映画ルーキー:その時は学生でまだ大学院に行ってた時期だったので、 大学院でやってるような研究発表と全く同じスタイルでパワポを作って、研究発表として見れるようにしようと思って作りました。
サメ映画の起源を遡る研究
中野:(パワポのスライドでは)歴史を遡ってて、本当にしっかりとサメ映画の初めに『ジョーズ』っていうのがあるけど、それ以前にもサメ映画が存在していることを論じてたり。

この頃はサメ映画の定義もそこまではっきりと作られてなかった頃でしたが、「サメが出る映画」という独自の条件を付けて、モノクロ時代から過去の作品をどんどん時系列順に紹介してくれてるという形になってますね。
本当にすごいです。今見てもちゃんとしてます。
サメ映画の定義とは
───今で言うと「サメ映画」というジャンルは確立しているように思いますが、スライドのお話を聞くに、その当時はサメ映画はホラー映画とかアクション映画などに分類されてたっていうことですか?
サメ映画ルーキー:そうですね。モンスターパニック(キングコングやゴジラなどのジャンル)とか、アクション、パニック、ホラーのどれかかな。
───なるほど。ちなみに、サメ映画学会ではサメ映画の定義を言語化しているのでしょうか。
サメ映画ルーキー:そうですね、まだふわっとはしてますけど。
「ジョーズ的要素」がカギに
中野:私の記憶の中で言えば、「サメ映画」とは次のようなものです。
・メーカーさんや製作者さんが「サメ映画」として売り出してるもの
・宣伝の際に「サメ映画」関連のキーワードが入っているもの
・ジャケットやパッケージにサメが入っている
・アニメとかドキュメンタリーは除外
・15分など短編は除く
特にアニメやドキュメンタリーはサメが出ていても違う話になってくる可能性が高いということで、我々の中では除外していますね。それから、サメ映画学会発足当初の頃は、「サメによる恐怖演出があるもの」という条件もありましたが、そこは今崩れつつあります。
サメ映画ルーキー:そうですね。定義の中でも特にふわっとしているのは、「『ジョーズ』的な要素を含んでる作品か」という点です。
ジョーズもそうですけど、 ジャケットなりポスターなりにサメがドーンと映ってますよね。それを見たら、大多数の人は「これはサメ映画だ」という風に判断せざるを得ないと思っています。

サメが人を襲う描写の重要性
あと、タイトルに「サメ」「シャーク」、あるいは「ジョーズ」が入ってたりとか、そういうサメを押し出したようなタイトルが、原題や邦題でついてたりしたら、それも外側だけで見てこれはサメ映画だっていう風に判断するようにしています。
でもそれだけじゃなくて、映画の中で「サメが人を襲う」っていうのが一番重要な要素です。サメが人に危害を加えるような描写はやっぱり、サメ映画として重要だなっていう風に考えてます。
味方のサメはサメ映画と言えるのか?
───なるほど。「サメによる恐怖演出」は確かに基本ではありますが、ありそうでなかった視点ですね。サメ映画やパニック系の映画は「人vsサメ」あるいは「○○vsサメ」という雛形に沿ったお話が多いように感じます。サメ映画の定義にのっとれば、「人間の味方のサメ」が出てくる映画は存在しないということになるんでしょうか?
サメ映画ルーキー:そうですね。定義に沿えばそうですが、古い作品で『チコと鮫』というサメと人間が友達になるという内容の映画があります。 結構変わった作品なんですけど、でもそれってジョーズのリリース前の作品なんですよね。
一応、その『チコと鮫』でも、サメが人に危害を加えそうな描写はあるので、サメ映画といえなくはないですが、ジョーズみたいに多くの人を襲うような作品ではないので。
やっぱりサメというコンテンツは映画内では、ほぼ必ず人を襲うために出てくることが多いので、 この作品は珍しい作品なんじゃないですかね。