釣りをしていると、「これ以上行きすぎると、怖いな」と思う場面が時々ある。オカッパリの釣りでは筆者としては「この先に自販機がない」が一番いやな感じがする。ある程度釣り人に対して親切でオープンな漁港ならば大丈夫だが、そうでないこともある。そこで一種の「セーブポイント」のような、いつでも安全確保して戻れる休憩所を作っておきたい。良いセーブポイントの条件をいくつか紹介しよう。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・井上海生)
釣り場には「何もない」
漁港や波止は何もアングラーのために作られたものではないので、そこまで親切なつくりにはなっていない。せいぜい自動販売機があればいいところだ。トイレがある場所は、むしろ少数だろう。だがこの二つがないと、まずは安全面で、そして人権面で詰むこともある。喉が渇いて水分が摂れないと脱水症状に陥るし、トイレをもし野外で済まさないといけないとなると(もちろんよくないことだ)人権面の問題が出てくる。
そう、釣り場にはそのような親切設計は何もないのだ。自分でポイント・オブ・リーターンあるいはノーリターンを知って、帰る場所を作っておかなければならない。いわば釣りの「拠点」だ。ある程度のインフラを持つ拠点を中心に釣りをしなければ、何もかも間に合わないこともある
見つけておきたい自販機、トイレ
セーブポイントの条件は、上にも挙げた二大要素だろう。自動販売機とトイレだ。まあトイレばかりはどうしようもないところがある。せいぜい駅やコンビニで借りるしかないだろう。ちなみに私は町中で便意に襲われた時には、よくパチンコ屋のトイレを使わせてもらっている。結構きれいで、人の行き来も無視みたいな感じなので使いやすいのだ。
外灯も安全要素
外灯、常夜灯は釣り人にとっては安心できるポイントだ。というのもまず、魚が集まりやすい。そして外灯があるということは、そこには少なからず人の行き来があるということだ。つまり、何かあっても発見してもらいやすく、助けてもらえる。また夜釣りでは、単純に外灯は松明のようなもので、精神的な安定をもたらす。
逆に言えば夜釣りで迷子になってしまったら、外灯の方向へと歩いていけばいい。人気(ひとけ)があることを指すものでもあるので、そこで自動販売機とトイレもうまくすれば見つかるかもしれない。
つまり、自動販売機・トイレ・外灯の三条件の一致する場所が、望ましいセーブポイントとなる。
ポイント・オブ・ノーリターンを知る
「逆戻り不可能」「これ以上は進むべからず」という臨界点を指して、しばしば「ポイント・オブ・ノーリターン」という表現が使われる。自分の身を危険に晒す状況への入口が、釣りにもよくある。もっともわかりやすいのは消波ブロックだ。最近は古いブロックの作り直しや増設も増えてきて、釣り人にとっては困ったことに、急傾斜となったブロック帯もある。一度下りると戻ってくることができない。
神戸の須磨海岸を例にとると、あそこは釣りができるのかどうだったか、ともあれ西に向かって砂浜を進んでいくと、本当にもうどこまでも進めてしまう。確か2kmは進めてしまうのではなかっただろうか?泉南の観音崎の消波ブロック帯も、凸凹しながらどこまでも続いている。釣れているときにはいいのだが、帰り道は地獄だ。
40代くらいまでの人間が疲れずに歩ける限界は分速80mで、10000歩くらい。一日8kmまでだ。オフロードならその半分、4kmまでが限界と思ったほうがいい。その途上に必ずセーブポイントを作り、水分補給と休憩をしたい。
深追いしない賢い釣りを
筆者は神戸の垂水漁港でよく釣りをする。垂水漁港は東西に広い漁港だ。東西くまなく釣っていこうと思うと、テンポよく釣りながらでも1時間はかかる。電車釣行では終電を考えなければいけないので、切り上げ際をどことするかも考えなければいけない。ちなみに垂水漁港は夜10時で駐車場も閉まってしまって発車できなくなるのでご注意を。
私にとって垂水漁港のセーブポイントは、駅から入ってきたところの真正面の自動販売機だ。ここがちょうど東西の真ん中ということもあるが、コンビニとパチンコ店というなんでも屋とトイレが近くにあるからだ。よってここからまっすぐ歩いて15分以上の距離には滅多にいかない。
セーブポイントの確保は、釣り人の「もっともっと釣りたい」という焦りと粘りと意地を制動する意識づけにもなる。何か釣り物を深追いしたことのある釣り人ならご存じのように、無駄足は本当に無駄足にしかならないのだ。いつでも戻れるセーブポイントを作り、深追いしない釣りの節度を保ちたい。
<井上海生/TSURINEWSライター>