我々日本人が幼い頃から慣れ親しんできた、昆布や煮干し、あごなどの「だし」。これらがいま、ピンチを迎えています。
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「あご」の不漁が問題に
九州から北陸にかけての各地で愛される「だし」のひとつ「あごだし」。あごとは日本海沿岸におけるトビウオの呼び名で、由来ははっきりしませんが万葉集にも登場する歴史のある言葉となっています。
あごだしはトビウオの焼干しや煮干しから取られただしで、これも東シナ海から日本海にかけての沿岸域で広く愛され、食卓に欠かせない存在となっています。しかしそんなあごだしがピンチに陥るかもしれません。
トビウオの水揚げは現在、全国的に減少傾向にあり、各地でトビウオ関連商品の製造ができなくなっているそうです。水揚げの多かった新潟県では、昨年の水揚げは2016年の3%にまで減少しています。
コンブが日本からなくなる!?
もっと深刻な「だしの素」もあります。それはコンブ。
コンブの一大生産地である北海道で近年、コンブの不漁が極まっています。道南ではコンブの水揚げが10年前の3%にまで減少した海域もあり、このままでは数年内に天然のコンブの流通はほぼ無くなる可能性があります。
現在は天然物の減少を養殖物が補っていますが、それでも現在の海洋温暖化傾向が続けばやがて限界を迎えるでしょう。日本の沿岸からコンブが消える日も絵空事ではなくなっています。
煮干しも鰹節も安泰ではない
他のだしの素も全く安泰ではありません。
煮干しの原料となるカタクチイワシは、主要生産海域である瀬戸内海で恒常的な不漁が続いています。2023年度は過去10年で最低の水揚げ量となりました。
鰹節の材料となるカツオも、世界的な資源量減少による漁業規制のあおりで水揚げが減っており、昨年度の水揚げは前年比80%となっています。
そばつゆの材料に欠かせない宗田節の原料であるソウダガツオも各地で水揚げが減っていると言われています。
このままでは、日本食の根幹ともいえるだし文化が我が国から消え失せてしまうかもしれません。農水省や環境省が旗を振り、漁業規制や資源管理などの対策を積極的に行っていく必要があるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>