ある種の魚にはリリース規定がある。「狙いで釣るのは禁じられている、もし釣れた場合は即座に再放流を」という魚種もいる。オカッパリでも禁漁規定はある他、小さな根魚の再放流が協力要請されていたりする。この理由をご存じだろうか？実は根魚は成長スピードが遅いのだ。
（アイキャッチ画像提供：TSURINEWSライター井上海生）
ライトロックが熱くなる時期
春から夏にかけて、ライトロックゲームが熱くなる。対象魚は主にカサゴ、メバル、ソイなどだ。海域によってはアコウも釣れる。パターン化しやすい魚でもあり、お持ち帰り目でも持ち帰れないほど来ることもある。
リリースの協力要請も知りたい（提供：TSURINEWSライター井上海生）日中でも釣れるので、楽しい癒しの魚とも言える。しかし、特に夏場にかけては、冬や春に産卵された魚の新子が増える。さすがに1歳未満の魚を持って帰るのは、殺生というものだ。それに、場所によってはリリース規定もあるので注意したい。
小さな根魚リリースのマナー
基本的に小さな根魚はリリースしてやってほしい。目安としては20cm以下だと筆者は考えている。その詳しい理由は後述するが、まず、リリース規定がある場合も多いのだ。
大阪湾では、キジハタには28cm以下はリリース規定がある。キジハタはどういうわけか大阪湾では自然繁殖しにくい魚で、小さいものは釣れてやってもリリースせよ、という話。この規定はもちろん守られなければならない。
ちなみに筆者は泉南の南端で、キジハタを放流している場所を知っている。そこで放流している姿を見たこともある。いやしい私はそこでネチネチと放流されたキジハタを狙ったこともあるのだが、釣れない。何かしら釣りには反応しにくい要素があるのだと思われる。
泉南ではキジハタが放流されている（提供：TSURINEWSライター井上海生）その他、重要魚種としてメバルとカサゴも、小さいものは再放流してほしいという協力要請がある。よく言われるようにこれらの魚は実は高級魚と言われる側面もあるのだが、「高級魚だから持って帰らないでね」という、そんな話ではない。
個体数減が嘆かれる魚たち
実はカサゴ、メバルは、個体数減が深刻な問題となっている。これは釣っていてもよくわかるが、明らかに数が少なくなっている。たとえば大阪南港では、一時期何をやっても釣れていたカサゴが、ほとんど反応しなくなった。多いときには週に3回通っていた私が言うのだから間違いない。メバルも年によって露骨に数が少ないときがある。
南港もそうだが、須磨以西も明らかに以前より水質がよくなっている。人工的な藻場の設置などこれにはいろんな理由があると思われるが、水質の向上により、持って帰る人が増えたのがその理由だ。メバルとカサゴは、1回の産卵でせいぜい5尾しか子ないし卵を産まない、というかその他の魚の餌にならず生き残れない。
小さな根魚は再放流を（提供：TSURINEWSライター井上海生）その上順調に育った魚が、コロナ禍で増えた釣り人口の数割に持ち帰られるとなると、明らかに数が減っていく。そうなると目減りする。どうか小さな魚はリリースをお願いしたい。
年間の成長スピードが遅い
根魚は全般に成長スピードが早い魚ではない。例を挙げると、たとえばメバルは、年間に4cm程度しか成長しないのだそうだ。ということは、アベレージサイズである18cm～20cmのサイズでも、4年～5年生きていることになる。アジは1年に15cmほど成長するのだから、この鈍足なこと！けなげにも長命を得た魚は、もう少し大きくなるまで持ち帰りを控えられたい。
メバル、10cm程度のから揚げサイズ、かわいいものだ。しかしこいつは、まだ2年程度の命。実はメバルは胎生で、親の体内から出ていくときには実に6mmのサイズしかない。そんな中、生存競争を生き抜いて、2歳ちょいでやっと10cmになったのだ。
生み出されたとき6mm（提供：TSURINEWSライター井上海生）筆者はこの魚のファンでもあるので、25cmを過ぎていても持って帰らない。ルアーフィッシングのターゲットでしかないと考えているので、愛でる意味をこめて、30cmになるまで再放流して釣り続ける。あくまで食用として考えないなら、抱卵している根魚と、小さなカサゴとメバルはなるべくリリースしてやってほしい。
＜井上海生／TSURINEWSライター＞
