キロ単価が最も高いと言われる魚のひとつノドグロ。標準和名と異なるこの呼び名の由来は一体何でしょうか?
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深海のルビー「ノドグロ」
深海には「ルビーのように」赤く輝く魚がたくさん生息していますが、その中でも別格の扱いをされる魚といえばやはりアカムツ。釣り人が「深海のルビー」という場合は基本的にこの魚を指します。
サイズの割によい釣り味や希少性など、美しさの他にも沢山の魅力をもつ魚ですが、やはり最も大きなものは「味の良さ」でしょう。
全身にたっぷりと脂が乗るその身は「白身のトロ」と呼ばれ、大きな個体の一本釣り物ならキロ単価20,000円を叩き出すこともあるほどの高級魚です。名産地の石川県や富山県で「ノドグロ」と呼ばれることから、全国的にもこちらの名前のほうが通りが良いかもしれません。
実はノドグロはアカムツだけじゃない
さて、アカムツ釣りをしていると、本命以外の赤い魚が釣れてくることがあります。その代表がユメカサゴ。
ユメカサゴは名前の通りカサゴの仲間で、夢見心地のようにぽやんと大きな目玉と赤く輝く魚体、そして真っ黒な口中が特徴です。その喉の色からこちらもしばしば「ノドグロ」と呼ばれます。
大きくても30cmをちょっと上回るサイズで、ときにうるさいほどに釣れることから深海釣りではゲストフィッシュのポジションにありますが、旬の初夏に釣れた大型個体は脂のりが良く、その味はアカムツにも負けません。
なんで喉が黒いの?
アカムツ、ユメカサゴともに、口の奥が黒いことからノドグロと呼ばれるわけですが、実は彼ら以外にも喉の奥が黒い魚は、特に深海にはたくさんいます。厳密に言うと彼らは「喉の奥が黒い」というより「腹膜が黒く、喉奥までその黒さが及んでいる」といったほうが適切です。
深海魚の喉が黒くなる理由は、彼らが食べている餌にあります。彼らは肉食性で、深海に生息する小動物や小魚を食べているのですが、このような小動物はしばしば発光性をもちます。自分の体から出る光を、海上から深海に届く僅かな太陽光とシンクロさせて自分の身を消しているのです。
ノドグロたちがこのような小動物を捕食すると、体内で暴れて強く発光します。その際に消化管からその光が漏れてしまうと、今度は自分たちがより大きな敵に見つかってしまう可能性があります。そのため彼らは腹膜を黒くし、その光が外に漏れ出さないようにしているのだと言われています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>