現在、我が国には数多くの「外来マス」が生息していますが、レイクトラウトもそのひとつです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
古株の外来種「レイクトラウト」
先日より、岐阜県のニジマスや秋田県のブラウントラウトなどといった「外来種のマス」がたびたび話題となっています。これらのマスは、かつて様々な目的で外国や日本の他の地域から移入され、各地に放流されました。
さて、このような外来マスについて、最も沢山の種類が生息している場所はどこかご存知でしょうか。それは栃木県にある中禅寺湖です。
中禅寺湖にはレインボートラウト(ニジマス)、ブラウントラウト(チャマス)、ブルックトラウト(カワマス)、ヒメマス、ホンマス、イワナそしてレイクトラウトという7種類のマス類が生息しています。これらのうち、最も聞き慣れないものはおそらくレイクトラウトでしょう。
レイクトラウトは我が国では中禅寺湖のみに生息しているとされてきた魚で、生息範囲の小ささゆえに知名度は低く、他の外来マスと違って和名もつけられていません。しかし移入されたのは今から60年近く昔のことであり、外来生物としては意外にも歴史があると言えます。
本栖湖で発見され大問題に
このレイクトラウトですが、昨年にニュースで取り上げられたことで存在を知った人もいるのではないでしょうか。そのニュースとは「いるはずのない湖で見つかってしまった」というもの。
レイクトラウトは上記の通り、日本では中禅寺湖にしかいないと言われてきました。しかし昨年、山梨県にある本栖湖で見つかり大問題となったのです。
レイクトラウト以外にも言えることですが、マスはいずれも大食漢かつ肉食性であるため、放流されるとその水域の生態系を破壊してしまうことが多く、むやみな放流はするべきではありません。
中禅寺湖のある栃木県と山梨県は、釣り人による密放流が行われたのではないかと考えており、現在では中禅寺湖からの生きたままの移送が固く禁じられています。
そのお味はいかに?
さて、マスの話を聞くと、我々魚好きとしてはどうしてもその味が気になるところです。
レイクトラウトは現在我が国では食用にされることは少なく、もっぱら釣りの対象魚としてのみ利用されています。しかし原産国では食用としても愛されているという話があり、釣れたものを持ち帰って食べる釣り人も多いようです。
レイクトラウトはイワナの仲間であるため、身の色は淡めで水分が多く、マスの中では見劣りします。実際に味の評価もあまり高くはないようです。
しかし中禅寺湖の個体は脂が乗っているものも多く、解体しているとなかなか美味しそうに見えてきます。実際のところ味も決して悪くなく、ムニエルやフライなどではジューシーな味わいになり美味しく食べることが可能です。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>