あんまり寒いと魚は釣れなくなる。それは釣りの世界ではまあ、「常識」というものだ。しかし、よく考えてみれば、「なぜ?」。人間は寒いと外に出なくなるが、なぜそのような感覚が、魚でも同じだと思えてしまうのか。全然違う生物なのに。もちろん、理由はある。今回は、なぜ真冬になると魚が釣れなくなるのか、一般に言われているワケを解説したい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
寒いと釣れなくなるのは「なぜ」?
魚は水温の変化に敏感な、基本的に、「変温動物」である。変温動物は、人間のような「恒温動物」と違って、自分で体温調節ができない。そのため、水が冷たくなると、冷水がモロに体に突き刺さるように感じられる、みたいな……。例を挙げれば、人間は水風呂には慣れるが、魚は慣れない。最悪、命を落とすということだ(ちなみに水風呂の温度は約11℃らしい。アジは沿岸からいなくなる水温だ)。
これだけでもまあ、魚が真冬になると釣れなくなる理由は理解できそうなものだが、それならば、「別にどこにいても海は寒いんじゃないの?」とも言いたくなる。それもまた違うわけだが――もう少し詳しく説明しよう。
沿岸からエサが消えるのが大要因
魚の行動原理は単純なもので、「エサを食べること」だ。食うために動く、これが原則。沿岸の魚を例に取れば、まずアジだ。アジは主にはプランクトンを捕食する。そのプランクトンは、ある程度の水温の中で日光を浴びて増殖する。光量が少なく、海水温も低いと、活動が鈍り光合成ができない。つまり、真冬の沿岸のプランクトンは激減する。するとアジが抜ける。そうなるとアジを食う魚も、沿岸からは消える……というわけだ。
「寒いと、プランクトンが消え、ベイトフィッシュが消え、魚がいなくなる」こう理解しておくと、単純で、分かりやすい。そのボーダーとなるのが水温12℃と筆者は考えている。
ちなみに、この記事を書いている2月15日の今、大阪湾の水温は、10℃ちょい。気温は19℃と、真冬の時ならぬ小春日和に恵まれているのだが、それでも朝の水温はこんなものだ。陽気に誘われて海に行っても、たぶん釣れないだろう。
去った魚は深場に潜る?
さて、上述の、「別にどこにいても海は寒いんじゃないの?」という話に戻る。これは、どうもそうではないらしい。私も潜って肌で感じたわけでは当然ないのだが、どうやら沖の深場が、一般にはちょっと暖かいらしいのだ。
身近な魚を例に取ると、メバルもそうだ。だがメバルはあまり回遊しない魚で、あまり天敵らしい天敵もいないので、出不精みたいな性質も持つのか、単に堤防際に着くのは変わらずレンジだけ底ベタになったりする。そういう場所が多少なり暖かいのだろう。あるいは狭いところなら体温が保てるのか、海底の窪みの中に潜り込んでいるのかもしれない(魚は変温動物なので、おそらくそんな理屈は通用しないのだが、雰囲気的に……)。
船釣りなら安定……ではない
「適水温の海に潜るなら、そういう深場なら、魚は釣れる?船釣りなら秋と遜色しないほど釣れるんじゃないの?」という考えもできそうなものだ。しかし、必ずしもそういうものではない。青物などはたまに真冬でも沖で爆発するらしいが、一般には真冬はどこを遣ってもダメなものだ。2月~4月くらいは、何を釣ろうにもきつい。魚はいても、ベイトがどうしても身を隠すので、活性が上がらない。せっかく船に乗ってもボウズもよくあるだろう。
筆者は、寒さを我慢して釣るのが好きではない。釣りは大好きだが、釣行回数の分、心身ともにしょっちゅう痛い目に遭っているので、寒さによって危険察知が鈍るのを恐れて、滅多に真冬は釣りに行かない。それでいいと思っている。釣れる春夏秋と初冬に数釣りし、思い出を釣り溜めて、真冬は休む。それが「釣り賢者」のシーズナルパターンというものだ。
<井上海生/TSURINEWSライター>