メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つ

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つ

卵持ちの魚を抱卵個体と言う。沿岸で釣れる魚ではメバルやカサゴが特にお腹がでっぷりとしているので、抱卵している状態がわかりやすい。しかし、ここに一つ驚くべき事実がある。実はメバルは卵生ではなく、胎生なのだ。卵ではなく、お腹に子どもを宿して、生む。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)

アバター画像
井上海生

フィールドは大阪近郊。ライトゲームメイン。華奢なアジングロッドで大物を獲ることにロマンを感じます。

×閉じる

お役立ち その他

メバルは珍しい「胎生」

卵生とは、繁殖の際に卵を産むということだ。産卵、である。他方、胎生とは、お腹にそのまま子どもを宿して、生む。出産、である。我々人間や哺乳類と近い。母体内である程度の姿まで成長してから、水中に解き放たれるのである。

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つ実は子どもが詰まっている!?(提供:TSURINEWSライター井上海生)

哺乳類は主には胎生で、海の生き物ではイルカ、クジラも同様に胎生だ(ちなみに、同じ哺乳類ではあるが、カモノハシは卵生である)。魚類はほとんど卵生なのだが、実はメバルは胎生という、魚類としては珍しい特徴を持つ。

正確には卵胎生

もう少し詳しく言うと、メバルは「卵胎生」と言い、また一段と特殊だ。雌雄が分かれており、オスの求愛にメスに応じて、交尾器を使って、交尾する。メスの卵巣の中に精子が入ると、受精する。これでそのまま卵が生み出されたら卵生というわけだが、メバルはそれにあらず。その後、仔魚が卵巣内で孵化し、出産されるまで母親の体内で育つのだ。

「抱卵個体」は言い間違い?

よって、俗に卵持ちの魚を「抱卵個体」と言うようにメバルもそう言うのは、違う。まあ別に見かけは同じようなものだが、お腹がでっぷりとしているメバルは、子持ちなのだ。子持ちメバル、とでも言うべきか。

メバルは簡単に釣れてしまうことから、個体数減が嘆かれる魚だ。できれば小さいのと、子持ちのメバルはリリースしてやってほしい。持続可能な釣りとするために……。

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つタケノコメバルも卵胎生(提供:TSURINEWSライター井上海生)

タケノコメバルという近似種がいるが、この魚も胎生らしい。エゾメバルという北海道で俗に「ガヤ」と呼ばれる魚も胎生。メバル属には世界で130を超える魚がいるが、100種以上が胎生ということだ。

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つムラソイも卵胎生(提供:TSURINEWSライター井上海生)

まあ、正確には卵胎生、であるが。

「胎生仲間」ウミタナゴ

その他、沿岸で釣れる魚で胎生の魚はいるか?いる。ウミタナゴがその代表種だ。

まさしく川のタナゴに似たこの魚。こいつも胎生として知られる。食べてもあまりおいしくなく、まとまって釣れることもないので釣り人には軽視されているような存在だが、胎生という変わった特徴を持つ。正確にはやはり卵胎生で、お腹の中で孵化してから外に出てくる。胎生の秘訣は、どうやら卵のままだと外敵に食われやすいというものらしいが、諸説あるのでここでは触れないことにする。

子持ちはリリース推奨

子持ちメバルの中で小さな姿を形成している仔魚。サイズは6mm程度になったところで海に放出される。わずか6mmで大海に放り出されるのだと思うとなんとも自然界は過酷なことか、人とはスケールはまったく違うが、まあそういうものらしい。6mmというと、下の画像のような大きさだ。アイフォンで接写しようとすると、まあまあぼけた。

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つたったこれだけのサイズで!?(提供:TSURINEWSライター井上海生)

ちなみにスポーニングといういわゆる「出産」の時期に入ると、メバルはかなり釣りにくくなる。12月~2月頃で、この時期はレンジが入るか、水温の急激な低下もあってルアーでは釣れにくくなる。しかしそんなに深追いして釣るものでもない。子持ちのメバルは実はそんなにおいしくない。それに何より、そんなものをあえて食ってやるのはやはり殺生というものだ。リリースしてあげよう。

メバルは魚類では珍しい「卵胎生」 母親の体内で孵化して6mm程度まで育つ5cmの子メバルは1歳!?(提供:TSURINEWSライター井上海生)

それにしてもメバルの成長速度は、実に1年4cmほどと言われるのだから、我々が目撃する最小サイズの5cmくらいでも、1年生きているということなのか……へえ。

<井上海生/TSURINEWSライター>