毎年年の瀬が押し迫ると、三重県・鳥羽沖が騒がしくなる。水温の低下とともに、伊勢湾奥から大挙して出てきた青物の群れが、伊良湖沖から鳥羽沖にかけての伊勢湾口に集結する。特に鳥羽沖はかつて20kgオーバーの日本記録のブリが出た海域。今回は12月22日に、鳥羽沖の巨ブリを狙って出撃した。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 杉山陽佑)
大寒波の中ジギング釣行
今回釣行を予定していた12月22日は、前日から今季一番の寒波の襲来で猛烈に冷え込む予報。北西風が吹き荒れ、岐阜県山間部では雪が降るらしい。それでも大小さまざまな島が点在する鳥羽沖では、なんとか釣りが成立することが多い。
防寒着にネックウオーマー、厚手の手袋を用意し、現地に向かう。今回の一緒に乗船するのは、本紙でもおなじみのがまかつアユフィールドテスターの渡邉敦さん。夏はアユ一辺倒だけど、シーズンオフはソルト、バス、ワカサギと何でもこなすマルチアングラーだ。
午前6時すぎに三重県鳥羽市赤崎の岸壁に到着し、準備を整える。お世話になるのは、菅島船籍のKAIEIMARU。菅島で泳がせ釣りで人気のある海栄丸の船長、木下定之さんの息子、寛都さんが数年前に操業を開始したジギング船だ。
赤崎の岸壁で待っていると、ほどなくKAIEIMARUが入港。この日は6人の乗合で、私たちは右舷に並んだ。
鳥羽沖の特徴
鳥羽沖のジギングだが、狙うポイント、釣り方はその季節によってさまざま。有名なのが、青物がタチウオの新子を捕食するタチウオパターン。フルシルバーのロングジグにしか反応しないことが多い。
だが前日に船長に確認したところ、最近はショート系のジグによくアタっているらしい。水深は浅くて20m、深くて100m前後。ポイントは加布良古水道をはじめとする内湾から、菅島沖の深場までさまざま。よって用意するジグは120~200gと幅広い。
主なポイントは加布良古水道をはじめとする湾内と、菅島から答志島の沖合いの深場。前日までは湾内でブリがよく上がっていたらしい。湾内では水深は20~60m、沖合いでは100m前後まで攻めることがある。
今季のブリは極太
釣行前から鳥羽エリアのジギング船の釣果情報を見ていると、今年のブリがやたら太いことが気になった。毎年この時期に釣れるブリは、寒ブリの名にふさわしいフットボール型が多く、脂ノリノリの身は真っ白。腹身はまさに大トロのあじわい。
特に今年は例年以上の尋常じゃない太さで、脂の乗りも最高。10kgに絡むビッグサイズも狙え、かつて日本記録のブリが出たのも12月。まさに鳥羽ドリームだ。
朝から沖へ
タックルの準備を終えて船長に聞くと、まずは湾内から攻めていくとのこと。目安だが、湾内であればジグは150g前後、沖の深場で180~200g前後がメインとのこと。まずセットしたのは剣屋の頑鉄150g。鳥羽沖では定番中の定番といえるジグだ。渡邉さんはTGベイト150gをセット。船は岸壁を離れて菅島方面に向かう。だが、ここで僚船から連絡が入ったのか、「ちょっと変更して最初は沖でやります」とアナウンス。ジグを頑鉄185gにチェンジ。
気になる海況だが、加布良古水道を抜けると、意外なほど風がない。だが船長は「これから吹きますよ」。気温は5度以下だろう。頬に当たる風は痛いほど冷たい。そしてポイント到着。船長から「水深90m。どうぞ」のアナウンスで開始となった。
前半はカスリもしない大苦戦
ジグをボトムまで落としてショートワンピッチに、時々大きくシャクり上げてフォールを入れていく。魚探の反応はまずまずのようだが、誰のサオも曲がらない。何度か小移動を繰り返し、丁寧にボトムから30mまでを探っていく。
風は船長の言葉通り強さを増し、見る見るうちに海面にうさぎが飛ぶようになった。だが、風波だけでウネリはなく、釣りに支障が出るほどではない。このエリアのジギングは、ドテラ流しではなくスパンカを上げて風に船を立てるため、波はミヨシからくる。そのため船はさほど揺れない。
それよりもつらいのが寒さ。さすが今季一番の寒波、手袋をしていても指先がじんじんしびれる。体がたっぷりの脂肪で覆われている私ですら寒さで震えているのに、細身の渡邉さんはさぞやつらかろう。
そんななか船長から「湾内に行きます」とアナウンスがあり、移動中はキャビンへ逃げ込む。連日ブリが上がっているという加布良古水道へ入ると、船は何度も旋回を繰り返す。だがこれといった反応がないようで、再び「やっぱり沖へ行きます」。