刺身に添えられる「つま」にはいろいろな種類があり、なかには一部地域でのみ親しまれているものもあります。
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「刺身のつま」なんのためにあるの?
刺身を食べるときに必ず添えられる「つま」。野菜や海藻を切って添えたもので、飾り物程度にしか思っていない人も多いですが、実際は刺身という料理に欠かせない存在です。
例えばつまの中でも最もポピュラーな食材であるダイコンやミョウガ、ワサビなどは、薬味として刺身の生臭さを消し、その旨味を引き立てます。またダイコンやワサビ、ショウガなどには殺菌作用があり、刺身の腐敗を遅らせる役割も持ちます。
また、シャキシャキしたつまの歯ごたえや爽やかな香りは口直しにもなり、口をリセットして刺身の味を感じやすくします。
加えて、和食においては食卓に季節を表すことが非常に大切とされており、季節ごとのつまを添えるのはその意味でも大切な存在です。
用途もさまざまな「つま」
そんな大事な「つま」ですが、使われる材料には色々な種類があります。
最も有名なのはやはりダイコンでしょう。厳密にいえば細長い紐状に切って刺身の下に置くものを「つま」と呼び、短めに切って刺身の横に並べているものは「けん」と呼ぶことが多いです。
それから海藻類。ワカメを細く切ったものやオゴノリ、トサカノリは皿の上に磯の風味をもたらし、また独特の歯ごたえが食事にアクセントをもたらします。
他にはミョウガ、大葉などの薬味を兼ねたものも少なくありませんし、見た目の華やかさを求めてキクや穂ジソのような花を添えることもしばしばです。このような花は食べられることはあまりないですが、食べられる花、いわゆるエディブルフラワーであることが多いです。
南国のつま「りゅうきゅう」
さて、そんな「つま」のなかで、とても地域性が高いものがあります。その一つが「りゅうきゅう」です。
これは別名ハスイモとも呼ばれるもので、里芋の仲間の植物の葉柄です。ハスイモは地下の塊茎を食用にすることはできませんが、葉柄を生食することができ、これをつまに利用します。
りゅうきゅうはシュウ酸カルシウムという刺激成分を含んでおり、皮をむいて塩もみし、水にさらしてからスライスして利用されます。葉柄の内部は細かい穴が無数に開いたスポンジのような構造になっており、シャリシャリとした軽い歯ごたえがして爽やかな味です。
醤油や魚からの旨味を吸い込むため、刺身を食べた後にその刺身が乗っていたりゅうきゅうを食べるのも乙です。高知県や鹿児島県など南方の地域でつまとして利用されており、とくにカツオの刺身にはよく付け合わせられるようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>