アメリカに「カミソリ貝」と呼ばれる二枚貝がいます。ちょっと危険そうな名前ですが、いったいどんな貝なのでしょうか。
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アメリカの潮干狩りターゲット「レザークラム」
我が国では春から初夏にかけて屈指の人気レジャーとなっている潮干狩り。北太平洋を挟んで日本の反対側にあるアメリカでも、日本同様潮干狩りはポピュラーなアウトドア遊びです。
中でも大きな内湾を持ち、潮干狩りに適した干潟や砂浜の多い西海岸北西部の中心都市シアトルでは、潮干狩りは特に盛んに行われています。
そんなシアトルで人気の貝のひとつに「レザークラム」があります。レザーとはカミソリ、クラムとは二枚貝のこと。つまり直訳すると「カミソリ貝」となるのですが、いったいどんな貝なのでしょうか。
レザークラムってどんな貝?
レザークラムの名は、殻の形状とその薄さに由来しています。彼らの持つまるでカミソリのように平たく薄い殻は、カミソリのような刃物をほうふつとさせるのです。実際、濡れてふやけた指で殻の縁をこするのは危険で、ときにスパッと切ってしまうこともあります。
この貝は砂浜にやや深く潜って暮らしており、浜に穴をあけて土ごと掘りだす「クラムガン」という専用器具で漁獲されています。アメリカではほかの魚介類と同様、レザークラムをハントするには免許が必要で採取数の上限もあるのですが、一つが15cmほどもある貝なので数個食べれば十分に満足できます。
当地では二枚貝の定番であるクラムチャウダーやワイン蒸しなどで賞味されるそうです。
マテガイが近しい仲間
さて、このレザークラムですが、実は日本にも類縁種がいます。それはマテガイ。
マテガイはレザークラムと比べると細長く、より四角に近い殻を持ちます。しかしこれもこれでカミソリに似ており、実際にカミソリガイと呼ぶ地域もあるようです。
マテガイもレザークラム同様、砂地に深く潜って生息しています。しかし日本では彼らを捕まえる際、クラムガンではなく塩を用いて捕獲されています。マテガイが砂に潜った際にできた穴に塩をかけるとぴょこっと飛び出してくる習性があり、子供でも簡単に捕まえることができます。
獲れたマテガイはレザークラムよりやや濃厚な味わいがあり、酒蒸しやバターソテーなど強めの味付けをすると美味しく食べることができます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>