魚の中には、体の組織を使って「音を出す」ことができるものいます。そしてそのような魚の中には「出した音」や「音を出すこと」が名前の由来となったものがあります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
可愛らしさの塊「ホウボウ」
突然ですが、ホウボウという魚をご存じでしょうか。カサゴに近い仲間の魚で、新鮮なものならよい値が付く高級魚です。
ホウボウの最大の特徴といえば、翼のように大きく、青と緑に彩られて大変美しい胸鰭。また、彼らの胸鰭の一部は足のような形状になっており、これで海底をとことこと歩いているように見えるのもかわいらしく、水族館などで目を引きます。
その顔も顔も正面から見ると「アヒル口」のような形状で、これもまたコケティッシュです。
名前の由来は「鳴き声」
そんなホウボウですが、そもそも「ホウボウ」とはいったい何のことでしょうか。実はこれは、彼らの出す「音」を表すという説があります。
ホウボウは捕まえたり釣りあげられると、浮袋を使って「ボウボウ」「グウグウ」といったような音を立てます。これが語源となったといわれているのです。
全国的にもホーホー、コウボウ、ボーボなど、同様に「音の響き」が由来とみられる地方名は多いです。
音を出す魚たち
さて、このホウボウのように「魚が出す音」が名前の由来になっている魚は少なくありません。例えばギギ。
ギギは淡水性のナマズの一種ですが、胸鰭の棘をこすってギーギーと音を立てる習性があり、これが名前の由来になっています。
また直接的な擬音語ではなくちょっとひねったものですが、ニベの一種「シログチ」は、釣りあげると浮袋を使ってグウグウと音を鳴らすのですが、これがまるで愚痴を言っているように聞こえるので「白愚痴」という名前になったとされます。
面白いのは、浅い内湾に生息する「コトヒキ」という魚もシログチ同様、浮袋をグウグウ鳴らすのですが、その様子は愚痴を言うことではなく「琴を弾くこと」に例えられています。
ちなみに彼らが音を出す理由についてははっきりしておらず、警告音や威嚇音、あるいは縄張り争いや求婚のために使われているともいわれています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>