「カキと言えば冬の食べ物」というイメージが強いですが、今後は一年中美味しいカキが食べられるのが普通になるかもしれません。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「夏にも食べられるマガキ」が登場
瀬戸内海に浮かぶ小豆島で、ちょっと変わったカキ(マガキ)が商品化され、話題となっています。
そのカキは、同島にある池田漁協が開発したブランドカキ「天領真牡蠣」です。このカキの特徴は「マガキであるにも関わらず、一年中おいしく食べられる」ということ。
同漁協では昨年(2022年)4月から試験的に養殖を始め、現在では約5万個を育てています。生産量が多くないので現在は島内のみの販売となっていますが、今後は養殖量を増やし島外への販売も検討しているそうです。
なぜ、夏にも食べられるのか
一般的に「英語でRの付く月」つまり9月(September)~4月(April)がマガキの旬と言われています。これに当てはまらない5~8月はマガキの産卵期にあたり、生殖巣を肥大させるのにエネルギーを使ってしまっているため身がやせており、美味しくないのです。
しかしこの「天領真牡蠣」は、三倍体という特殊な個体のマガキ。カキの受精卵に特殊な刺激を与えることで、一般的な個体よりも染色体の数が多い個体を人工的に作り出すことができるのです。
カキに限らず、三倍体の個体は産卵行動を行わないことが多いです。そのため生殖巣が発達せず、夏でも身がやせないのです。
夏と言えばイワガキ、というわけでもない
さて、一般的に「夏に美味しいカキ」と言えばマガキではなくイワガキを想像する人が多いと思われます。
イワガキはマガキと異なり、産卵期が長く、夏の時期にも生殖巣が発達していない個体がいるため、夏を含め一年中美味しく食べることができます。
しかし一般的にイワガキはマガキと比べると大きく、また養殖物も多くないため1個単位での価格が高くなりがちです。そのため生食されるのが普通で、カキフライなど加熱調理に用いにくいとされています。このような理由から、夏場にもマガキの需要は存在するのです。
ちなみに上記のような三倍体マガキ以外にも、夏にもあまり水温が上がらない環境を生かして養殖された北海道・厚岸湖のマガキなどが、夏にも流通しています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>