一年中、あまり味がかわらないといわれるのがタチウオです。今回は旬のタチウオの美味しい食べ方と作り方をご紹介いたします。晩御飯の一品やお酒の肴にいかがでしょうか?
タチウオの身質について
その身はあくまでも白くて品がよく、見る角度によってはうっすらと紅をはいたようにも写ります。お造りにしたあと一片の身を箸でつまんで口に入れしっかりかみしめてみると、意外に歯応えがよくてどこにこれだけの脂質とうまみが潜んでいたのかと、食べるたびに驚かされます。
その質感とうまみは、同じ長もの仲間のハモほど淡麗ではありませんが、かといってアナゴやウナギのような野性味があるわけではなく、もっと素朴でいかにも海の魚らしい素直なうまさなのだと思うのです。
こういう魚は、いかように料理してもおいしいですね。魚が大きくて新鮮ならシンプルな塩焼きでさえ、ため息が出るほどおいしいですよね。
そんな魚の究極の料理法をよく知っているのが漁師や釣り船の船長さんです。
そこで、昔からタチウオ漁が盛んな紀州の漁師さんから教わったタチウオの酢の物を紹介しておきましょう。総菜にもなりますが、お酒の肴にピッタリの料理です。
タチウオの下処理
まず、タチウオの頭を落として腹を割き内臓をきれいに掃除します。このとき背骨に付いている血合いを忘れずにこそげ取っておきます。
あとはお腹周りの汚れをふきんできれいにぬぐってから三枚下ろしにします。このとき1匹そのままを三枚に下ろすのは大変ですから、下ろしやすい大きさ(25~30cm)にぶつ切りにしておきます。
ぶつ切りにした身は、背ビレを付けたままでは三枚に下ろしにくいので、まず身の両側から背ビレに沿って浅くV字型に包丁を入れておきます。こうしておくと背ビレを持って引っ張るだけで簡単に背ビレを外すことができます。
あとは、普通の魚と同じように骨に沿って包丁を入れていけば、きれいに三枚下ろしが完成します。
食感のポイント
歯応えがある身を好む人は、皮をつけたまま銀皮造りにするといいでしょう。
それが嫌な人は皮を引いてから身を適当な大きさに切り、三杯酢に漬け込みます。ただ、タチウオの鮮度が落ちたものを銀皮造りにすると、銀皮に含まれるグアニンで中毒することがあるため、かならず釣りたての鮮度がいいものを使って下さい。
味付けについて
三杯酢は好みの味つけでいいのですが、わが家では酢と砂糖がメインでしょう油は色づけに数滴垂らす程度です。
そして、タチウオの身に添えるのは塩もみした薄切りのキュウリだけです。
この酢の物、二時間も漬け込むと身が白濁してくるので、早めに食べる方が歯ごたえがあって味もフレッシュでおいしいですよ。
ただ、少し時間をおくと身に含まれる脂質やうまみがじわじわと三杯酢と融合し、時が経つにつれてさらに味が増幅される感じがします。熟成された味がお好きな人は、こちらがお勧めですね。
清酒との相性は?
この料理はビールよりも清酒との相性がことのほかよかったですよ。ただ、酸味が強い酢を使った料理なので、酸度の高い清酒は相性が悪いので避けた方がいいでしょう。
少し甘口ですがあと口さわやかでほどよく味がある純米酒あたりが最適かもしれません。
僕が好きな和歌山県海南市に蔵がある「黒牛」の純米酒や新潟県の「〆張り鶴」純あたりがお勧めです。
<週刊つりニュース関西版 今井浩二/TSURINEWS編>