日本人男性の名前に使われる単語としてはトップクラスに多い「太郎」ですが、実は魚にも「〇〇太郎」と呼ばれるものがあります。
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鹿児島で「秋太郎」が水揚げ
九州南部・東シナ海に面し、漁業の盛んな鹿児島県阿久根市。ここで先月半ば、「秋太郎」と呼ばれる魚が大量に水揚げされ、話題となっています。
10月16日、阿久根市の南西30kmのところに浮かぶ甑島の周辺で、地元の巻き網漁船が「秋太郎」を20匹ほど水揚げしました。いずれも体長が2mから3mほどもある大物だったといいます。
この周辺の海域では秋太郎の水揚げは決して多いものではなく、ちょっとした秋の珍事に地元漁業関係者は喜んでいるそうです。
「秋太郎」とは何者か
この秋太郎という魚、標準和名はバショウカジキといいます。名前の通りカジキの一種で、大きな背鰭が特徴。バショウというバナナによく似た葉の大きい植物があり、背鰭がまるでその葉のように立派なためこのような名前がつけられました。
バショウカジキはその大きな鰭を生かして高速遊泳することで知られており、運動量が多いためか筋肉にすじが多く入ります。またカジキの中では小型で脂ののりもあまり良くないことから、重要食用魚の多いカジキ類の中ではやや評価が低く安値となっています。
それでも南日本の沿岸では好んで漁獲されており、とくに旬の秋には脂が乗り、マグロにも負けない味になります。このことから「秋太郎」という地方名がついたとされています。
「〇〇太郎」と呼ばれる魚たち
しかし「秋」はわかるのですが、なぜ「太郎」と人のような名前がつけられているのでしょうか。
実は我が国では、それが人であるかないかを問わず、大きなものや雄大なものに「太郎」とつける文化が存在します。流域面積が日本一の利根川を坂東太郎と呼んだり、北海道で仕留められた大きなヒグマに北海太郎と名付けたりするのがその好例です。
バショウカジキはカジキの中では小型ですが魚としては巨大な部類であり、太郎と呼ばれるのも納得がいきます。魚では他に大型のスズキをオオタロウと呼んだり、山形県に存在するとされる伝説の怪魚が「タキタロウ」と名付けられるなどといった例もあります。
ただし例外もあり、山口県でキンタロウと呼ばれる魚は標準和名ヒメジという20cm足らずの小魚です。地元では美味しい食用魚として愛されていますが、なこう呼ばれているのか理由ははっきりしないそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>