今年6月、とても残念な事故が発覚した。日本製鉄東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)で、毒性の強いシアンが東京湾や周辺の川に相次いで流出していたのだ。この事故を教訓に、釣り人として、今一度釣り場の環境に目を向けてみたいと思います。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター宮坂剛志)
シアンが東京湾に流出
今年6月、とても残念な事故が発覚しました。日本製鉄東日本製鉄所君津地区(千葉県君津市)で、6月から毒性の強いシアンが東京湾や周辺の川に相次いで流出。小糸川が赤く染まり、クロダイやウナギ、ボラの稚魚などが無残にも浮かんでいた映像は、ショッキングだったのではないでしょうか?
この小糸川は、筆者の地元だけに馴染み深い。河口に行けば、カレイやシロギス、シャコなんかも釣れる豊かな場所なだけに残念でならない。また、周辺には木更津沖堤防や潮干狩り場、すだて遊び場などがあり、釣りだけでなく海のレジャーも楽しめる場所として昔から親しまれてきました。事故後、漁協宛に不安を感じた方から事故の影響についての問い合わせが来ているとのことです。
目に見えない恐怖
東日本大震災の放射線漏れもそうですが、人体に影響のあるのに目に見えない物質は本当に怖いと感じます。5年後、10年後、人体にどんな影響があるのか?ないのか?よく分かっていないから怖いです。水質汚染もそうです。
今回の事故で漏れ出したシアン化合物も、海水で分解されるので人体への影響は考えにくいそうですが、シアン化合物は最悪、人体に入ると死の危険がある猛毒です。しかし、小糸川のように赤く染まって大量に魚の死骸でも浮かない限り、目に見えないですし、誰も気に留めません。だからと言って本当に人体への影響がないのか?東京湾の魚や貝を食べて平気なのか?誰にもわかりません。
分からない恐怖
近年、東京湾内の奥まった河川で釣りをしていると、昔は釣れなかった魚がよく釣れてきます。クロダイ、マゴチ、メッキ、カライワシなど。市街地の水路のような河川で、このような魚種が釣れだしたのはここ数年です。特にメッキが陸っぱりの東京湾奥河川で釣れたのは驚きでした。地元の釣り師に聞いても、「かわった魚が釣れる」と言っていましたので、生態系が変わったと感じるのは、筆者だけではないでしょう。
真冬の河川でクロダイが元気に泳ぎ回っている姿や、メッキが釣れるのを見ると、工場からの温排水、温暖化による水温の上昇の影響は大きいと思います。だからと言って昔より魚が減ったかと言われると、そうではないと思います。筆者の地元の小河川を見る限り、魚種が増えて生態系はかわった感じですが、エビや貝類を含めて減った感じはしません。
これが将来人類にどのような影響が出るのか?出ないのか?本当に温暖化や温排水が原因なのか?こちらも本当の所は誰にも分からないのです。目に見えない、分からないから怖いのです。
時間は少ない
新日鉄君津の事故もそうですが、東京湾以外でも記憶に新しいところだと1997年、日本海で起きたナホトカ号重油流出事故があります。油でまみれた海鳥の映像は、今でも覚えています。そして、海の環境へのダメージは年々大きくなっていると思います。魚が劣悪な環境に順応しているため、悪臭漂う地方の小河川にも魚が増えている感じはします。違和感しかありません。
聞くと昔は泳げるほどキレイだった場所が、今や工場からの洗浄水や船の塗料、油、生活排水に投げ捨てられた粗大ごみなど、汚れに汚れきっています。それでも秋になると、地方の河川にはハゼ釣り師やウナギ職人達がズラリと並びます。皆様、釣ったハゼやウナギは美味しく食べるようですが、正直心配になります。すぐに人体に影響はなくても、ジワジワと蝕んで来るのではないのか?そういうのが1番厄介で怖いと思います。