染め物や防臭スプレーなどに欠かせないミョウバン。食品添加物としても重要な一方、魚介類に使用されることについては嫌う人も少なくありません。
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ふるさと納税でトラブル
先日、北海道で「ふるさと納税」絡みのトラブルがニュースとなりました。日本海に浮かぶ利尻島の利尻町が発送したふるさと納税の返礼品のウニについて「味がせず見た目も悪い」というクレームが相次いだのです。
詳細について調査が行われた結果、発送を担当した水産加工業者が返礼品に「ロシア産」のウニを混ぜていたことが理由と判明。町は謝罪や返金などの対応に追われました。
ロシア産のウニ
さて、このニュースについてのコメントを見てみると「ロシア産のウニがなぜ国内で流通しているのか」という疑問の声が多く上がっているようです。しかし、実はロシア産ウニは我が国でもごく一般的な商品です。ロシアによるウクライナ侵攻が起こる前は、スーパーで売られるウニの少なからぬ量がロシア産でした。
ロシアは海を挟んで隣国であるとはいえ、ウニはとても軟弱で賞味期限も短い食材。ロシア産のウニを国内で流通させられる理由のひとつには「ミョウバン」による加工が施されているからということがあります。
ミョウバンとは?
一般的にミョウバンとは、カリウムとアルミニウムが硫酸と反応してできた化合物を指します。
このミョウバンには、タンパク質の組織をしっかりさせる「収れん作用」があります。このため、ウニのような柔らかく崩れやすい食材の形状を保ち、保存性を高めるために添加されます。この他、余計な水分を抜くことでウニの味を立てたり、劣化して臭みが出るのを遅らせることもできます。
ミョウバンはウニ以外の海産物にも使用されます。例えば、クラゲの脱水の際に食塩とともに添加され、クラゲ独特のパリパリした歯ごたえを出すのにも用いられます。
また、江戸前寿司に欠かせないネタながら、小さくて身が柔らかいために扱いが非常に難しい「新子(コノシロの幼魚)」を加工する際にも少量添加されることがあります。
「ミョウバン不使用」が正解?
そんな海産物の加工に欠かせないミョウバンですが、最近特にウニについて「ミョウバン不使用」を商品選びのポイントに挙げる人が多くなっているように感じます。
実際、ミョウバンには独特の匂いと苦味があり、使用法を誤るとそれがウニの味に影響を及ぼします。しかし一方で、ミョウバンを使用しないウニは非常に身崩れしやすく変質も早いものとなります。
臭みのあるウニにあたったときに、すぐミョウバンのせいにしたくなってしまうものですが、ウニ自体劣化すると臭みやエグミが出る食材であり、ミョウバンのせいとは言い切れません。
価格に差も
またミョウバン不使用のウニについてはたしかに美味ですが、加工や流通の経費がかかり、一般的にミョウバン使用のものと比べ高価となる傾向があります。国産ウニが昨年の赤潮で大ダメージを受け、ロシア産の輸入も難しくなりつつあるなかウニの市場価格は高騰を続けており、ミョウバン未使用のウニは今後なかなか手の出せないものとなっていく可能性はあるでしょう。
ウニに限らず、ミョウバンは正しく使えば安価に品質保持ができる便利なアイテム。使用されるのにはしっかりとした理由があり、無意味に忌避するのも考えものと言えるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>