コイやナマズなど、多くの魚を特徴づける器官である「ヒゲ」。種類によって本数が異なるほか、成長によって本数が変わるようなこともあるようです。
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魚のヒゲに関する展示
島根県出雲市にある、淡水・汽水魚専門の水族館である「宍道湖自然館ゴビウス」で、いま「魚のヒゲ」をテーマとした展示が実施され、話題となっています。
企画展「魚のヒゲのひみつ!」では、魚のヒゲの秘密をテーマとし、ヒゲが特徴的な魚や名前に「ヒゲ」が付く魚など約10種類40点の魚を展示しています。企画展は5月9日まで開催される予定です。(『ヒゲのある魚がゴビウスに集結「魚のヒゲ」の秘密に迫る企画展(島根・出雲市)』さんいん中央テレビ 2022.4.4)
「舌」や「センサー」の役割
コイ目、タラ目、ナマズ目など、口の周りに生えたヒゲが特徴的な魚は少なくありません。
多くの魚において、このヒゲには「舌」の役割があることが知られています。我々の舌には、味を感じ取る「味蕾」という細胞が存在しているのですが、魚のヒゲにもこの味蕾が存在しており、甘味、酸味、辛味、苦味などの味覚を認識することができると言われているのです。ヒゲを持つ魚たちは、このヒゲを海底の中に差し入れたり、海中を漂わせて餌を探します。
またそれ以外にも、ナマズの細長く伸びたヒゲは、障害物や水流、匂いなどを感知する感覚器の役割をも持っていると考えられています。いわば彼らのヒゲは「舌」であり「手」であり「鼻」でもある万能器官なのです。
ヒゲの本数が変わる魚も
そんな魚のヒゲですが、その本数は魚種によって決まっています。例えばコイやフナなどといったコイ科の魚は、だいたい1対2本のものが多いです。
一方、同じコイ目に属する魚でもドジョウの仲間はより本数が多くなっています。しかしそのグループの中でも、ドジョウは5対10本、シマドジョウは3対6本、ホトケドジョウは4対8本となっており、種によって変化が大きいです。
また、目や鼻の穴と同様、ヒゲの本数も偶数本なのが当たり前と思われがちですが、奇数の魚もいます。代表的なものが深海性のタラの仲間である「ソコダラ類」で、下顎の下にあまり長くないヒゲが1本だけ生えています。
ちなみに、ヒゲの生えた魚の代表格ともいえるナマズですが、彼らのヒゲには大変面白い特徴があります。幼魚のときは3対6本ありますが、成長に伴いなんと2対4本と減少してしまうのです。なぜ本数が変わるのか、その理由についてははっきりとは分かっていないそうです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>