気温が上がる春は潮干狩りのシーズン、しかし最近はアサリやハマグリなどの二枚貝が減少しており、簡単に採ることはできません。そんな貝に代わる(?)有望なターゲットとなりそうなとある貝をご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:茸本朗)
潮干狩りシーズン開幕
春は環境が大きく代わる季節。春一番が吹き、地上の気温が急上昇する頃になると、海にもとある大きな変化が訪れます。
それは「干満の時間が逆転する」こと。基本的には一日に2度ある「干潮」ですが、それぞれの潮の引く度合いには大小が存在します。秋から冬にかけては、大きく潮が引く干潮が「夜中」に訪れるのですが、春から夏にかけては「昼間」に大きく引きます。
このことに加えて、一年で最も干満の差が大きくなるのが「春」と「秋」であると言われています。これらの条件が合わさり、春は「日中に」「潮が大きく引く」ため、潮干狩りに最適なシーズンとなるのです。
「アサリ」「ハマグリ」の時代は終わった?
難しいテクニックを必要とせず、老若男女が楽しめる潮干狩り。古くから親しまれる、アウトドア・レクリエーションの花形といえる遊びです。
しかし、潮干狩りのメインターゲットとされるアサリは、ニュースでも盛んに報道されている通り全国的に漁獲量が激減しており、中国からの輸入品がないと需要を満たせないほどになっています。
また、同じく人気のターゲットであるハマグリも今や絶滅危惧状態。流通しているものの多くが中国産のシナハマグリとなっており、国産の純正種は幻ともいえる存在です。
とうぜん、これらの貝は身近な浜辺からもいなくなっており、これらを潮干狩りで採るのは一般人には非常に困難となっています。現代に潮干狩りを楽しむためには、別のターゲットを探す必要があるでしょう。
意外と美味しい「ソトオリガイ」
さて、そんな「現代の潮干狩り」でおすすめとなるターゲットのひとつに「ソトオリガイ」があります。漢字では「衣通貝」と書き、殻が薄くて透き通っている様子から「その美しさが衣を透けて見えた」という衣通姫の伝説にちなみ名付けられました。
ソトオリガイは極めてマイナーな貝で、食用として流通することはありません。しかし、東京湾のような浅い内湾であればどこでも生息しており、誰でもかんたんに採ることができます。
ソトオリガイは殻長5cm前後とあまり大きくはなく、パッと見は小さなミルガイのようです。アサリのように幅広い調理法があるわけではありませんが、茹でてむき身にすると甘みがありなかなか美味な貝です。殻が割れやすいので見つけたら指で丁寧に扱い、調理前にしっかりと砂出し(できればエアレーションを行いながら)をするのが良いでしょう。
このソトオリガイのような「潮干狩りで採れるマイナーだけど美味しい貝」は他にもシオフキなどいくつかあります。そういった貝を知っていくことが、今の時代に潮干狩りを楽しむために必須となるのではないかと思います。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>