サカナが縁起物として扱われるワケ 子孫繁栄・火事よけなど意味は様々

サカナが縁起物として扱われるワケ 子孫繁栄・火事よけなど意味は様々

魚は我々ヒトにとって「食材」として、また地球の生態系を支える存在として大変重要な存在ですが、文化的な側面で言えば「モチーフ」としてもまた重要な存在であるといえます。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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宗教文化で使われることも

欧州世界においては、魚はとある宗教の文化において欠かせない存在です。その宗教とは、世界で最も信者数が多いとされる「キリスト教」です。

キリスト教において「魚」は神聖な意味を持っています。宗教画には魚が描きこまれているものが多く、聖書の中のエピソードにも魚は多く登場します。なぜ魚が重要な存在になったのでしょうか。

ローマ帝国時代、キリスト教はまだマイナーな宗教の一つに過ぎず、異教として迫害を受けていました。そのため信者は信教をおおっぴらにできず、言葉や見た目に表さずとも互いが同じ宗教を信じていることを知るための方法を必要としていました。その中で用いられたのが「イクトゥス」です。

サカナが縁起物として扱われるワケ 子孫繁栄・火事よけなど意味は様々中に文字が描かれたイクトゥス(提供:illustAC)

イクトゥスは、2本の曲線を重ねて作ったごくシンプルな魚の模様。一人の信者が1本めの曲線を描いておいたところに、別の信者がそれに合わせてもう1本の曲線を書き込んでイクトゥスを完成させると、互いがキリスト教徒だとわかるという仕組みになっています(もしキリスト教徒でない人が見ても、1本のただの曲線に過ぎずなんのことかわからない)。

ギリシャ語で「魚」を表す「イクトゥス」は、キリスト教が迫害されることの少なくなった今でも、神聖なものとされています。キリスト教において魚が重要な存在である大きな理由の一つと言えるでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>