「透明で細長い小魚」という特徴を持つ魚たちが美味しい季節になりました。シラウオにシロウオにノレソレ・・、全部知っていますか?
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各地でシロウオ漁が解禁
佐賀県北部の中心都市・唐津市の浜玉町を流れる玉島川で、春の味覚「シロウオ」の漁がスタートし、話題になっています。
漁ではまず、当地でのシロウオ漁で用いられる「やな」の設置が行われます。すだれや石がハの字型に仕掛けられ、先端には網が取り付けられます。産卵のために遡上してきたシロウオがやなに沿って進み、網の中に入り込むことで漁獲することができます。
玉島川でのシロウオ漁は、2月中旬から3月まで行われます。シロウオは同じ唐津市の松浦川や、福岡県の室見川での漁が有名になっています。玉島川同様にやなを用いるところが多いですが、四手網や大きなタモ網で漁獲する地域もあります。
シラウオとシロウオ
さて、筆者は現在関東在住ですが、こちらではシーズンになっても、シロウオを店頭で見かけることはあまりありません。なぜならシロウオは鮮度落ちが激しく、活けの状態で流通するのが一般的であるため。産地の少ない関東ではどうしてもマイナーな魚となってしまうのです。
一方で、こちらではシロウオによく似た「シラウオ」はとくにこの時期よく見かけます。霞ヶ浦や網走湖産のものが多く、活けではないですが「生食用」も多く出回ります。
そのため、たまにシロウオが入荷していると「へえ、生きたシラウオが売られているんだ」と誤解してしまう人もしばしば見かけます。標準和名シロウオとシラウオは全く異なる魚で近縁でもないのですが、名前が似ているので混同してしまうことは多いようです。
ちなみに両者は漢字で書くと「素魚」と「白魚」なので、間違えないようにあえて漢字で書くこともあるようです。
春の魚屋は「透明な魚」だらけ
さて、この時期鮮魚店の店頭に並ぶ魚には、ほかにも「透明なもの」があります。それは「ノレソレ」。
ノレソレは、シロウオの透明さとシラウオのシルエットを併せ持ったような不思議な魚。実はこれは特定の魚の標準和名ではなく「ウナギ目のいろいろな魚の幼生」です。
ウナギ目の幼生
ウナギ目の魚は孵化直後に「レプトケファルス幼生」という段階を経るのですが、この状態では全身が透明で、細長い柳の葉のような形状をしています。これを高知などでノレソレと呼び、春の食材として賞味します。生のまま醤油や柑橘の絞り汁をかけて食べるととても美味しいです。
本格的な鮮魚店では早春になると「シロウオ」「シラウオ」「ノレソレ」が並んで売られることもあり、魚に詳しくない人だとその違いがわからずに困惑してしまうかもしれません。加えて「生しらす」(イワシの仔魚)も売られていたりするともうパニックになってしまうでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>