コロナ禍で守らなければならないのが黙食。これを食べると無口になるというのがカニ。今年は例年以上に需要が高まるかもしれない。今回はおいしいズワイガニの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター有吉紀朗)
冬の味覚ズワイガニ
11月6日にスタートするのが日本海西部のズワイガニ漁。オスのカニを北陸では越前カニ、山陰では松葉ガニと呼ぶが、同じカニでまた港によって津居山カニ、丹後の間人カニ、加能カニ(加賀、能登)とか港の名前がつくことがある。香住カニはベニズワイカニの呼び名で、通販やネットで購入する場合は注意。
「彼女はどこか遠い北の海で獲れた蟹を思わせるところがあった」と『暗夜行路』に書いてあったような気がするのだが、このカニは越前カニと書いているのが釣り師であり美食家の開高健で、ちょうどカニのシーズンは越前海岸に水仙が咲き乱れる頃で潮風の中の甘い匂いも記憶に残る。
ズワイカニの種類
広告を見るとカニの説明にオピリオ種とかバルダイ種と書かれているが、ズワイガニの種類のことで標準和名ではバルダイ種はオオズワイガニと言う和名で、ロシア沿岸のオホーツク海、ベーリング海の南東、アリューシャンに生息、北海道でも噴火湾をはじめとした太平洋岸で少量漁獲される。ロシア、アメリカからはおもに冷凍で輸入されている。
オピリオ種は和名ズワイガニ。島根県以北の日本海と太平洋側では犬吠埼以北に生息して、高緯度ほど浅海に住みキスカ島では水深数mにも生息。ロシアからは活けものでも入荷していた。英名はスノークラブ。冷凍の箱にはクィーンクラブとも書かれているが、タラバガニのキングクラブからするときめ細やかな味を表している。
ベニズワイカニは、昔は加工品や棒肉になっていたが、最近香住カニとして売りだし、知名度も株も上がってきた。トゲズワイガニやミゾズワイもいるが市場で見たことはない。
マルズワイと言うのは商品名で、オオエンコウガニのこと。ズワイガニの仲間ではないが身は甘い。
状態を表す呼び名
「水カニ」というのは脱皮したてのズワイガニで値段も安い。よく若松葉と書かれて売られているが、味も大きさも硬ガニになったからのほうが商品価値も高い。
「ススガニ」というのは甲羅にススがついたようなカニで、一種のカビらしくズワイガニだけでなくベニズワイもこの病気にかかることが知られてるが、入荷することは少ない。
「二重カニ」というのは脱皮直前のカニで殻が二重になっている。カニが大きくなるのは脱皮時だけ、つまり身はぎっしり入っている。